2012 Fiscal Year Annual Research Report
量子論に基づく符号理論の新展開と情報セキュリティへの応用
Project/Area Number |
22540150
|
Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
浜田 充 玉川大学, 量子情報科学研究所, 教授 (10407679)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 誤り訂正符号 / 応用数学 / 情報基礎 / 量子コンピュータ / 情報通信工学 |
Research Abstract |
平成24年度に発表あるいは執筆した研究内容は主に以下の2つである。 1. 量子誤り訂正符号を初めとする有限体の構造を利用した広いクラスの符号(剰余符号と呼んでいる)について、符号化器構成の高効率化に関する結果を得た。これは、以前に報告者が発案した多項式時間構成可能な符号の一部で使われていた技術を拡張したものである。以前に発案した符号はCalderbank-Shor-Steane符号という符号のクラスに含まれるが、同技術は、それよりも広いクラス、すなわち、一般のシンプレクティック符号に適用可能である。抽象度の高いものを具体化するような成果で、量子誤り訂正符号の具現化に資する結果と考える。 2. 量子誤り訂正符号化・復号化を含む量子情報処理過程に関する基礎的な結果を得た。それは、様々な場面におけるユニタリ演算子の実現性に関するものである。(ユニタリ演算子は量子系に対する操作を一般的に表すものである。)この結果は、量子計算に関する教科書に広く見られる誤謬に気づいたことを動機として得られた。得られた主要結果(定理)は論理的帰結としてその誤謬を明白に指摘する。テクニカルには、指摘した誤謬は、述語論理を用い主張を厳密に確認することを怠ったゆえの誤謬のように思える。建設的な意義は別の機会に書くが、少なくとも、この分野で高名な理論研究者らが教科書中に繰り返してきた誤謬を指摘したことには意義があろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進めている。最上位の区分を付けなかったのは以下の理由による。平成23年、東日本における放射性物質降下に伴い被曝対策に想定外の時間をとられることになった。結果、発表が遅れている内容が幾つかある。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに符号の構成および性能解析に関して研究を進めたが、それらの研究成果の多くの発表形式は会議録・紀要およびテクニカル・レポート等である。今後は、これらの内容を整理または強化し論文誌への投稿に適した形に纏めることを計画している。また、昨年度中に着想を得た研究を含め進行中の研究も更に推進する。ここで、昨年度に着想を得た研究とは、量子誤り訂正符号のエンコーダのような量子情報処理の効率を定量的に論ずる上で有用な基礎的かつ建設的な研究である。具体的に、最も早く投稿を予定している研究は、この新しい着想によるものである。また、以下のような数年来続けている研究の成果も論文誌投稿を目指し強化する。 申請者の原著論文“Concatenated Quantum Codes Constructible in Polynomial Time: Efficient Decoding and Error Correction”(2008) において提案した量子誤り訂正(シンプレクティック)符号の構成法を発展させ、より高効率な量子誤り訂正符号をこれまでに構成している。また同論文の符号を wiretap channel の名のもと Wyner によって定式化された盗聴下通信の問題に適用し、その定式化のもと提案の符号が問題の最適な解となっていることを証明している。これらの成果は、IEEE 情報理論に関する国際会議(ISIT)において発表し、これまでにその周辺の発展的結果も得ている。 無論、研究内容はこれらに止まらない。
|