2013 Fiscal Year Annual Research Report
量子論に基づく符号理論の新展開と情報セキュリティへの応用
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22540150
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
浜田 充 玉川大学, 量子情報科学研究所, 教授 (10407679)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 量子力学 / 線形代数 / 符号理論 / 情報理論 / 情報セキュリティ |
Research Abstract |
量子情報処理に関する以下の基礎的かつ建設的な成果を得た。すなわち、量子計算のための回路(アルゴリズム)のユニバーサルな構成の問題を動機として、SU(2)において任意の元を積に分解する問題を提起し解決した。SU(2)から3次元ユークリッド空間における回転のなす乗法群SO(3)への準同型により、同時に、任意の回転を回転の積に分解する問題も解決した。具体的には、分解後の要素はあらかじめ与えられた2軸のまわりの回転に限るという制約の下、任意の回転を分解するのに必要な分解要素の最小数を決定した。(上記準同型によりSU(2)の元も回転と呼ぶことがある。) この成果は原稿 arXiv:1401.0153 に纏めた。本結果は、前年度の研究において得たオイラー角に関する成果を出発点として得られた。その成果の中心となるのは、オイラー(Euler)角を使ったある関係式が成立するための必要十分条件であった。そのうち、必要性は量子計算のユニバーサル性に関する誤謬を指摘し具体的に反証を与えるため用いられた。本年度は、上記の建設的な結果を導くために十分性を利用した。また、最適性を示すために、構成方式を導くための議論とは全く異質の幾何的な不等式を発見し用いた。なお、最小数は、ターゲットとなるユニタリ演算子の関数として与えてあるが、問題の性質としては連続体濃度を持つ集合の要素に付与された離散量を最小化するという独特のものである。このような問題に対し、解を明示するとともに厳密な最適性を証明した。他に量子誤り訂正符号に関する研究を進めた(未発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予稿を伴う学会発表が3件、招待講演1件、投稿原稿1件(いずれも原稿は英語にて記述)他があり成果物は順調に得られた。ただし、当初研究目標に掲げたうちの符号(あるいは量子回路によるそのエンコーダ)の理論的限界の解明に関する研究を進めるうちに、量子符号の基礎となる分野で重大な誤謬が広まっていることに気づいた。そして、本年度実績に記述したように、その誤謬を正した上で正しく問題を定式化し、その問題の最適解を得ることに注力したため、より具体的な符号の研究は後回しになった。
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Strategy for Future Research Activity |
一義的には当初目標で強調した剰余符号の研究を進めるが、本年度実績に記述した成果は、量子符号化を含む量子情報処理に関して跋扈していた誤謬を正すのみならず、代わりに何ができるか、すなわち建設的な最適解を示したという点で、革新性が高い。したがって、この時機に研究を推し進める価値があるものと思われる。そのため、当初予期し得なかった、この方向に特化した研究も進める。
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