2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22540155
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Research Institution | Yokkaichi University |
Principal Investigator |
小川 束 四日市大学, 環境情報学部, 教授 (90204081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 光生 四日市大学, 付置研究所, 研究員 (80053677)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 近世日本数学史 / 至誠賛化流 / 大成算経 / 同文算指 |
Research Abstract |
本年度は至誠賛化流における平面幾何の公式,解法の論理的構造の解明を進めた.近世日本における各流派においてはユークリッドの『原論』のような形での命題(公式)群の構成はなされなかったが,それに類似したカリキュラムがあった可能性はある.そこで提示された命題(公式)群がどのように組織立てられているか,その相互関係を検討することによって,それらの流派の想定する幾何学の全貌が明らかにしようとした.この方向での先行研究は管見の範囲内では未だない.研究成果は京都大学で開催された研究集会等で発表し,数理解析研究所講究録に掲載される予定である. また,18世紀の数学の体系の一つとして関孝和・建部賢弘・建部賢明による『大成算経』とそれに関わる関孝 和や建部賢弘の著作も視野に入れた.本年度は冒頭の「五技」から「三要」までを主要な研究対象とした.珠算法のうちの乗法部分については詳細な解読を試み,その結果は数理解析研究所講究録へ掲載される予定である.「三要」については研究分担者とともにセミナーで解読を試みた.関孝和の著作の総合的理解のための全集の編纂も関係者と進めた. 他方,『大成算経』を中心とした円理研究は建部賢弘の時代における円理史を考察する上で重要であり,この解明にも取り組んだ.この方向では研究分担者とともに『綴術算経』の英訳を完成した. さらに東アジアに属する日本の数学の特色を把握するために,中国における数学の体系をも視野に入れた.数年来続けてきたセミナーにおいて,クラヴィウスの著作の中国における受容に関して,"Epitome arithmeticae practicae"の第20章Regvla Societatvmとそれに対応する『同文算指』合数差分法の中国語,ラテン語双方の日本語訳をほぼ完成した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
至誠賛化流に関する研究成果は「『淇澳集』における解法の構造について」,「至誠賛化流の幾何学」(掲載確定)として論文にまとめることができ,「至誠賛化流の幾何学」,"Mathematics in the Shisei-Sanka(至誠賛化)School"として発表することができた.『大成算経』に関しては「『大成算経』の畸零について」,「『大成算経』の「雑技」について」(印刷中)を論文にまとめることができ,『綴術算経』については研究分担者とともに"Mathematical Treatise on the Technique of Linkage: An Annotated English Translation of Takebe Katahiro's Tetsujutsu Sankei Preserved in the National Archives of Japan"としてその翻訳することができた.また『同文算指』についてはセミナーにおいて研究成果を共同で資料としてまとめることがほぼできた.このことからおおむね順調に進展していると言って良い.
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Strategy for Future Research Activity |
概ね24年度と同様の進め方で十分と思われる.ただし,クラヴィウスの著作の中国における受容に関する研究はほぼ終了したことから,この方向での研究は一応収束させ,主たる研究対象を至誠賛化流の分析,『大成算経』,関孝和の著作の編纂としたい.
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Research Products
(5 results)