2012 Fiscal Year Annual Research Report
摂動キルヒホフ方程式とp-ラプラシアンタイプの波動方程式の大域的研究
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22540171
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
梶谷 邦彦 筑波大学, 名誉教授 (00026262)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | キルヒホフ方程式 / ノントラッピング条件 / 解の漸近挙動 / 熱方程式の一般境界値問題 / 強ロパチンスキ条件 / L^p-L^q 評価 / 可積分条件 |
Research Abstract |
24年度は、空間次元が多次元のキルヒホフ方程式に対する、時間無限大における解の漸近挙動を調べた。すなわちキルヒホフ方程式の解は時間が大きくなるにつれて波動方程式の初期値問題の解に、その初期値が可積分条件を満たし、さらに方程式の係数がノントラッピング条件をみたすとき、漸近することを証明した。この結果を国際会議および国内においては東海大学大学における解析シンポジュム等で講演し、また論文としてまとめ筑波大学数学ジャーナルに発表した。 さらに昨年度は、熱方程式の半空間における初期値境界値問題の解が可積分能な積分核をもつ積分作用素によって表現されることを示し、その解表示を用いて、初期条件および一般境界条件を満たす熱方程式の解が時間に一様な空間に関するLinfity-L1有界性およびLp-Lq有界性が成り立つための境界作用素に対する必要十分条件を求めた。すなわち境界作用素 B=d/dxn+b1d/dx1+...+b(n-1)d/dx(n-1)+d, (b1・・・b(nー1)、dは定数の複素数)は強ロパチンスキ条件をみたしさらに(Re d)の2乗=(Im d)の2乗not=0のときRe d<0を満たす。ここで強ロパチンスキ条件とはn-1次元実ベクトル f=(f1、・・・f(n-1))および複素数 gに対して Re g が -c|f|の2乗より小さいとき{g+|f|の2乗}の{1/2}乗+b1f1+・・・b(n-1)f(n-1)+d not=0を満たすような正数cが存在することである。さらにpが1または無限大でないとき、強ロパチンスキ条件のみで解がLpで有界になることが示せる。これらの結果はフランスのパリのポアンカレ研究所におけるセミナーおよび国内の早稲田大学応用解析さらに山口大学における研究集会等で講演し、さらに論文にまとめ数学の専門誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究の課題はキルヒホフ方程式とpラプラシアンタイプの波動方程式の大域的な性質を調べるのが目的であったが、24年度までに達成されたのはキルヒホフ方程式の大域的な性質であり、pラプラシアンタイプの波動方程式についてはいまだ手つかずの状態である。その意味で当初研究の達成度は60%である。25年度はpラプラシアンタイプの波動方程式の研究が課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の第一義的研究はpーラプラシアンタイプの波動方程式の解の局所解および大域解の存在を示すことである。まず局所解の存在を示しそれを延長することによって大域解を求めたい。 さらに時間的余裕があれば24年度で得られた熱方程式の半空間における初期値境界値問題の解の表示を用いてストークス方程式の一般境界値問題の解を表示し空間におけるL^p有界性を示したい。
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