2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540181
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
藤解 和也 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (30260558)
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Keywords | Nevanlinna理論 / Bank-Laine予想 / 微分方程式 / 零点分布 / 指数多項式 |
Research Abstract |
全平面で定義される超越的有理型函数が満たす微分または差分方程式に関する研究は、R.Nevanlinnaによる値分布理論を用いてこれまで多様な成果が得られている。一方で、部分領域特に単位円板上に正規化された定義域をもつ有理型函数についても、単位円板内における値分布論が同様に成立することから、殆どの結果に対し類似する成果が得られている。本研究では、単位円板上の有理型函数に対して、値分布理論のみならず関数空間的な手法を用いて多くの良い結果を得ているJ.Heittokangas博士と共同で、単位円板上の特に微分・差分方程式に関して、平面上で予測されるものとは全く異なる現象を確認することを目的として研究を実施した。その結果、正しいと広く信じられているBank-Laine予想という、整函数A(z)を係数とする二階線型常微分方程式y"+A(z)y=0の解の零点分布と係数:の位数:に期待されている関係が、単位円板では成立し得ないことを発見した。勿論、これによって上記の予想が否定的に解決できるということでは決してないものの、少なくとも微分方程式に関しては、ある程度の穏やかな条件を其々に仮定すれば、平面上で成立する定理は単位円板上に於ける主張として書き換えることが可能である、との経験則を否定する結果となった。本研究課題ではこれまで、ネバンリンナ理論を実1変数の区分的に線形な連続関数の成すmax-plus semiring上の有理型関数族に対する値分布理論として移植しているが、今回の研究成果は定義域が有界区間であるトロピカル有理型関数族に対して同様な考察を行おうとする際の重要な知見を与えたと考えている。以上により、繰り越しとなっていた研究目的は計画通り達成された。
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Research Products
(2 results)