2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540187
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森本 芳則 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30115646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上木 直昌 京都大学, 人間・環境学研究科, 准教授 (80211069)
浅倉 史興 大阪電気通信大学, 金融経済学部, 教授 (20140238)
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Keywords | ボルツマン方程式 / non-cutoff / 超局所解析 / 衝突積分項 / 平滑効果 / 大域的平衡解 / 時間大域解 / 解の一意性 |
Research Abstract |
ボルツマン方程式は,非平衡希薄気体の運動方程式で,時刻t、空間の位置xで、速度vを持つ気体粒子の密度分布f(t,x,v)を未知関数とする微分積分方程式であり、物理的に重要なモデルでは、その衝突積分項の核が粒子の衝突角度を変数として特異性を持つ。これまでの多くの研究は特異性をもつ部分を取り去った条件(Grad's angular cut-off assumption)の下で議論されてきた。一方,積分核が特異性をもつ場合には衝突積分項は速度変数に関してラプラス作用素の分数べきと等価な擬微分作用素的な振る舞いをし、ボルツマン方程式は空間一様(spatially homogeneous)、あるいは空間非一様(spatially inhomogeneous)な場合、それぞれに応じて、その解に対して、熱方程式、あるいはコルモゴロフ方程式におけるような解の平滑効果(smoothing effect)が予想されてきた。本年度の研究において、衝突積分核が粒子間の相対速度について特異性をもつ場合も考慮した上で、空間非一様なnon-cutoffボルツマン方程式の初期値問題に対して時間大域解を、大域的平衡解であるMaxwellian関数の摂動として構成することに成功した。また、この時間大域解の平衡解への時間無限での収束安定性を示すと共に上で述べたボルツマン方程式の平滑効果を、構成した時間大域解を含むより広い解集合に対して明らかにした。更にMaxwellian関数の摂動という枠を超えて、ボルツマン方程式の初期値問題の時間局所解が、初期データの空間変数に関するある種の有界性の仮定から、構成できることを明らかにした。得られた大域解、局所解を含む広範囲な関数空間の中で、ボルツマン方程式の初期値問題について解の一意性が成立することも示した。これらの研究は、衝突角度変数と粒子間相対速度に関して特異性を持つ衝突積分項を擬微分作用素、特異積分作用素などの超局所解析の方法を用いて精密に評価することにより可能となった。
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