2011 Fiscal Year Annual Research Report
低次元ダイナミカルシステムに適合する相空間解析法の新構築
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22540190
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
杉江 実郎 島根大学, 総合理工学部, 教授 (40196720)
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Keywords | 関数方程式論 / 相空間解析 / 大域的漸近安定性 / ハミルトン系 / 半分線形系 / 極限閉軌道 / 国際研究者交流 / 韓国:中国 |
Research Abstract |
本研究開始2年目にあたる本年度は,基礎理論を整備・構築するとともに,その応用・発展にも力を入れた。実施計画に沿って,研究代表者が単独にまたは研究協力者や連携研究者の支援を受けながら研究を進め,3つのテーマそれぞれに多くの成果を得ることができた(以下の番号は交付申請書に記載したものに対応している)。 1.ハミルトン系を内包する非線形微分方程式系 1-2生態学への応用 昨年度に得られたハミルトン系の零解の大域的漸近安定性に関する成果を生態系モデルとして有名なロトカーボルテラ系の現象解析に応用し,すべての解軌道が内部平衡点に漸近するための条件を得た(Proc.Amer.Math.Soc.2011 ; Appl.Math.Lett.2011に掲載済み)。また,捕食者・被食者モデルの極限閉軌道の一意存在性のための必要十分条件を得た(SIAM J.Appl.Math.2011に掲載済み)。 2.周期係数をもつ線形微分方程式系 2-1基礎理論の整備 昨年度に得られた線形微分方程式系の成果を精査することにより,準線形微分方程式系にも同様の議論を進めることが可能であることを考究した(Ann.Mat.Pura Appl.2011に掲載済み)。 2-3テーマ1への帰還研究 線形微分方程式系の零解が漸近安定であることを保証する条件が単振子の研究にも有効であることを示した(Proc.Amer.Math.Soc.に掲載決定)。 3.半分線形微分方程式系 3-2テーマ1との関連研究 2次元半分線形微分方程式系の零解が(一様)大域的漸近安定になるための条件を得た(Proc. Royal Soc. Edinb. 2011 ; Nonlinear Anal. 2011に掲載済み,Monatsh. Math.に掲載決定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究開始から現在までの2年間に得られた成果は11編の国際的にも評価の高い国際誌に掲載済みまたは掲載決定であることからも,本研究は十分良好な進捗状態にある。そのうちの2編は中国や韓国の有力な研究者(一人は本研究の研究協力者:范猛教授)との共同論文であり,今後の研究交流が期待される。本研究は関数方程式論の複数のテーマを純粋数学的側面から解決するのみならず,生態学の未解決問題にも真正面から取り組んでいる。その意味で,交付申請書の「研究目的」及び「研究計画・方法」に記載したように,本研究は社会への還元も視野に入れた発展的課題であると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も交付申請書の「研究計画・方法」に記載したタイムテーブルに沿って,本研究を進める。特に,最終年度にあたる本年度は応用研究を重視する。例えば,テーマ3に関連する研究が船舶工学における問題(静水中の漁船の横揺れ)に密接な関係を有することが分かってきた。これについても力を注ぎたい。また,引き続き,テーマ1の一部である生態モデルに関する研究も国際的な交流も視野に入れて継続する。さらに,最終年度で行う予定であるテーマ3の一部(振動定理の導出)も既に,研究協力者である呉奮〓副教授と共同論文を作成中である。尚,テーマ2に関しては,現在までにほぼ完了した。 問題点として残るのが,テーマ4の差分方程式系と微分方程式系の比較研究の遂行である。もし,これのみが当初の計画通り進まない場合は,上記に挙げた種々のテーマをさらに特化して発展されることとする。
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Research Products
(15 results)