2010 Fiscal Year Annual Research Report
変数係数双曲型偏微分方程式のエネルギー減衰とその周辺
Project/Area Number |
22540193
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池畠 良 広島大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (10249758)
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Keywords | 波動方程式 / 変数系数 / 摩擦項 / 臨界減衰 / エネルギー / 減衰率 / マルチプライアー法 / 拡散現象 |
Research Abstract |
平成22年度から始まる今後4ヵ年に亘る研究期間の初年度である今年度の当初の研究の目的は、空間遠方にて臨界的に減衰する摩擦係数を持つ波動方程式の初期値問題を扱い、その全エネルギーの最良と思われる減衰率を導出すること、であった。これまでは、空間5次元以上の場合については、ある程度の結果をこの科研の申請前からすでに得ていたが、最も大切で難しい空間2,3,4次元の対応する結果の導出が、本年度の主な課題であった。基本的な証明の戦略は高次元版と同様であったが、より精密でデリケートな計算を敢行することによって、それら低次元の結果を得るに至った。これによって、すべての次元において、当該エネルギー減衰率同定問題の「完全解決」に至った。ここで得られた結果は、1976年に松村氏の導出した定数の摩擦係数を持つ波動方程式の初期値問題についてのL^{p}-L^{q}評価式の特別な場合(p=1,q=2)の、変数係数の摩擦係数を持つ波動方程式版に対応する、基礎的で画期的なものと言える。またこの結果によって、摩擦係数が空間遠方で「劣」臨界的に減衰する先行結果と、摩擦係数が空間遠方で「優」臨界的に減衰する場合のエネルギーの非減衰性の結果とを橋渡しすることが可能となり、大変意義深い。これに関する論文は、現在ある数学の専門的雑誌に投稿中であり、その採否が待たれる。尚この研究は、米国テネシー大学数学科のG.Todorova氏とB.Yordanov氏との共同研究による。一方で、連携研究者である佐賀大学の小林氏とのNavier-Stokes方程式に関する研究については、現在も進行中であり、遅くとも来年度での結果公表が待たれる。
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