2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540194
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川下 美潮 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (80214633)
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Keywords | 境界値逆問題 / 熱方程式 / 囲い込み法 / 散乱逆問題 |
Research Abstract |
本研究における当初目的は次の境界値逆問題と散乱逆問題について考察することであった。 (1)熱方程式の境界値逆問題を「囲い込み法」の視点から解析する。 (2)弾性表面波に対する定常問題に関する散乱逆問題を解析する。 今年度も引き続き、連携研究者の池畠勝氏(群馬大学)と共同で、上記の(1)、(2)のうち主に(1)についての考察を行った。熱方程式における境界値逆問題については、これまでの研究で、無限回観測で、内部構造が穴、または介在物(境界はある程度なめらか)のみであることが事前に分かっている場合には穴や介在物の凸包を知ることができることが確かめられている。我々のこの研究成果を踏まえ、今年度は、一回観測のときにはどうなるかについて調べた。 一回観測のときには大きく分けて2通りの定式化が考えられる。そのうちの一つは無限回観測のときと同じ発想を一回観測の場合にも適用することから導かれる。このときは穴や介在物と外側の境界との距離が求まることを確認した。この量は囲い込み法では初めて捉えられたものである。平成22年度に行った無限回観測のときの研究と今回の一回観測のときの考察を比較を通じて、今回の結果が本質的に新しいことを含んでいることが確認できた。定式化の発想が似ていることから、途中までは無限回観測、一回観測に共通した議論にまとめることができ、ともにパラメータ付き楕円型問題の解の漸近挙動を調べることに帰着されることが分かった。無限回観測のときとの違いは、選べる解が外側の境界のみの境界値問題の解しか使えないということにある。この解はポテンシャル論を用いて構成し、その表示から漸近挙動を導くことにより結論を得た。この証明から「最初に内部の境界にぶつかる点までの長さ」を見ていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要の欄で述べたとおり、平成22年度の無限回観測のときの研究に加えて、今年度の成果である一回観測のときの考察も一部完了した。さらにそれぞれの結論を得るための方法を比較検討し、結果として、今のところ最初に内部の境界にぶつかる点までの長さ」を見る方法を与えたというのがこれまでの研究成果の意味であることまで理解できた。これらを総合して「おおむね順調に進展している。」と判断しそ良いと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書の「研究の目的」欄に記載した計画に従えば、今後は研究業績の概要の欄で述べた(2)の研究課題について考察を進めないといけない。しかしながら、これまでの成果を見れば、(2)に直接進むよりも、(1)の考察で得た知見を他の関連した問題に適用し、「最初に内部の境界にぶつかる点までの長さ」を見ているという現在の見解が本当に正しいのかどうかについて調べる方が良いと思うようになって来ている。実際、こちらの方面では一回観測の場合に新たなことが分かりつつあるので、来年度はその方向で研究することを優先させようと思っている。
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