2012 Fiscal Year Annual Research Report
滑らかな係数と精密な対角化による発展方程式解析の新たな展開
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22540197
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
廣澤 史彦 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (50364732)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 双曲型偏微分方程式 / 変数係数 / 非線形波動方程式 |
Research Abstract |
平成24年度の研究実績は以下の通りである。 (1)伝播速度が時間に依存する半線形波動方程式の大域可解性: 定数係数の場合には既知である半線形波動方程式の初期値問題に対する大域可解性が、変数係数の場合には成り立たない可能性がある。このような問題において、係数の C2-class の滑らかさが、解の安定性のための評価に寄与することは過去の研究から知られていたが、係数の C3-class 以上の滑らかさの寄与についてはよくわかっていなかった。このような問題に対して、本研究代表者が開発した手法を用いて、一般の Cm-class、更には Gevrey class で記述される係数の滑らかさが、大域可解性に与える影響を精密に記述することに成功した。 (2)2階単独弱双曲型方程式の ultradifferentiable class における適切性について: 時間変数に関して ultradifferentiable class の関数として特徴付けられる係数を持つ2階単独弱双曲型方程式の適切性を証明した。これは、Cm-class の係数に対する既知の結果の一般化であるが、ここで証明された係数の滑らかさと解空間の精密な関係は、単なる先行研究の改良では難しく、本質的に新しい手法を導入したことによって証明できたものである。 (3)Kirchhoff 型準線形波動方程式の大域可解性: 小さくない初期値に対する Kirchhoff 型準線形波動方程式の非実解析関数の空間における大域可解性に関する考察を行った。平成24年度は、大域可解性が成り立つことが期待される解空間の設定に関する考察を主に行った。この研究により、次年度に当初の目標である、その空間における Kirchhoff 方程式の大域可解性の証明を行ってゆくための道筋をつけることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形波動方程式の大域可解性の問題、Kirchhoff 型準線形波動方程式の研究については、当初の計画通り順調に進んでいる。しかし、変数係数斉次双曲型方程式の適切性とエネルギー評価の問題については、一部で当初予想しなかった困難が生じたため、計画を少し変更し、当初の目標に準じた結果の証明を試みる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究によって、最終年度である次年度終了時までに、当初の計画はおおむね達成されそうである。一方、その過程で、関連する新たな興味深い問題も生じ、その幾つかの解決のためには新たな発想が必要であると考えられる。今後は、現在取り組んでいる研究の仕上げと同時に、次の問題を解決するためのヒントを周辺分野の研究者と連携しながら探ってゆく予定である。
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