2011 Fiscal Year Annual Research Report
変分問題、最適化問題および非線形偏微分方程式の解の構造の研究
Project/Area Number |
22540203
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
倉田 和浩 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 教授 (10186489)
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Keywords | 解析学 / 関数方程式 / 変分問題 / 非線形現象 |
Research Abstract |
1.パターン形成問題で、飽和効果のあるケモタキシス系において軸対象な領域上での軸対象な解でいくつかの点に凝縮するような多重スパイク定常解に関する研究成果をまとめたものを査読付き専門雑誌に掲載した。飽和効果と凝縮解のプロファイルとの関係を明らかにしたこと、対応する極限方程式の解の一意存在、非退化性を証明できたことと一般的な方法論を確立したという意味で重要性を持っている。 2.オーミック加熱現象を記述する数理モデルに現れる非線形楕円型境界値問題の解の構造を、物理的にも自然なロバン境界条件の下で研究し、ディリクレ境界条件の場合より豊富な解の構造を持つことを示した。関連する分野の中で、この問題は非局所的な非線形項を自然にもつ数理モデルとなり、その非局所的非線形項のために解の多重性が起こるという点で意義深いものとなっている。この結果は、不安定な定常解が存在することで、オーミック加熱現象において与える電位にしきい値の存在を意味するもので物理的にも重要と考えられる。 3.連携研究者の神保氏との共同研究で、細い領域でのラプラシアンのディリクレ・ノイマン混合境界条件下での固有値を考え、幅の値をゼロに近づけたときの漸近的挙動を研究し、一定の成果が得られた。関連する問題として、ロジスティック方程式に非線形境界条件を課したパターン形成問題における梅津氏(茨城大)の分岐解析への応用や、量子物理におけるquantum waveguideの問題があって、我々の研究結果は意義深い結果となるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オーミック加熱現象の数理モデル、パターン形成問題、量子現象に関連する数理モデルの研究テーマで一定の経過を得ることができている。特に、連携研究者の神保氏との細い領域におけるラプラシアンの固有値の漸近挙動の研究は計画以上に進展した。また、連携研究者の柴田(将)氏との量子グラフ上の非線形シュレディンガー方程式の定在解の研究も研究のとっかかりはできており、さらに検討を進めている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
パターン形成問題で、より一般的な領域上での定常スパイク解や内部遷移層を持った解の構成問題に関するリャプノフ・シュミットの方法論や特異摂動論を取り入れての考察を進める予定である。そのため、九州大の栄氏や広島大の坂元氏らに研究協力をお願いし、議論を進めたいと考えている。連携研究者の神保氏と進めている固有値の漸近挙動の問題でさらに、別の混合境界条件を課した場合の影響を調べること、また関連するスペクトル問題や非線形問題を検討していく予定である。
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