Outline of Annual Research Achievements |
1、ラプラス・ボレル変換のq-類似とq-差分方程式の研究を行った。ラプラス・ボレル変換のq-類似については, Rammis, Zhang, Di Vizio達の先行研究があるが, 彼らの理論では,自然数nにはqのn乗冪が対応していた。自然数nがそのq-類似の[n]に対応するという普通の対応関係のもとでのラプラス・ボレル変換のq-類似の構成は, 未解決のまま残されていた。この部分を, 今年度の研究で完全に解決した。同時に, この新しいq-類似に対応するq-合成積の理論も構成し, 合成積定理のq-類似も導いた。この理論は, q-差分方程式の発散形式解のボレル総和法の研究に大いに役立つものと期待される。実際, ジェブレイ指数が1のときのモデル方程式に対しては, 発散する形式解に対して, それを漸近展開にもつ真の解の存在が確認された。しかし, 一般の方程式に対しては今後の問題として残された。 2、非線型偏微分方程式で, nonlinear totally characteristic type と呼ばれる方程式の研究を行った。Chen-田原(Publ. Res. Inst. Math. Sci., 35 (1999))や田原(J. Math. Soc. Japan, 55 (2003))では, 旧来のポアンカレ条件のもとで解の存在が示されていた。しかし, この条件を満たさないケースも多く存在する。そのようなケースも扱えるように, 一般化されたポアンカレ条件を導入し, そのもとで「すべての形式的べき級数解が常に収束する」ことを示した。理論のキーポイントは, 新しいニュートン図形の導入にある。一般化されたポアンカレ条件は, このニュートン図形を調べることによって解析される。結果として, 多くの新しい方程式に対して正則解の一意存在が示された。
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