2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22540210
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
青木 貴史 近畿大学, 理工学部, 教授 (80159285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松井 優 近畿大学, 理工学部, 准教授 (10510026)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 漸近解析 / WKB解 / 接続公式 / 擬微分作用素 / インスタントン解 / 超幾何微分方程式 / 合流型超幾何微分方程式 / 表象 |
Research Abstract |
本年度は以下の3つの目標を掲げて研究を開始した。第一は超幾何微分方程式のパラメトリック・ストークス現象の解明、第二はパンルヴェ階層のインスタントン解構成の研究、第三は無限階擬微分作用素の核の合成と表象の積の整合性確立である。第一の目標に関しては、ほぼ当初の目的を達成できたと考えている。すなわち、超幾何微分方程式のヴォロス係数の計算、ストークス幾何のパラメータによる特徴付け、およびそこで得られたパラメータ領域におけるヴォロス係数のボレル和の計算、さらには隣接する領域間におけるWKB解の解析接続の関係記述といったことに関して、概ね満足のいく結果が得られた。また、これらの研究成果から派生して、合流操作を行うことによりクンマーの合流型超幾何微分方程式に関する同様の結果が得られることの予想が得られた。実際の計算・証明は来年度以降の課題となるが、パラメータに関する漸近解析に関して大きく進展させることができた。第二の目標に関しては、インスタントン解の構成に際して問題となる小分母の問題の解決に向けて努力を行い、低次の項の具体計算ではうまくキャンセルが生じて、分母の零点が限られた集合に含まれることの予想を得た。第三の目標に関しては、擬微分作用素の核函数にみかけのパラメータを導入することにより、積の定義を単純な積分路における積分として行うことが可能であることを見出した。このアイデアを正当化するために、見かけのパラメータ付き局所コホモロジーの理論が展開可能であることを確認しておく必要がある。さらに、このような余分なパラメータをもつ核函数と表象との関連を研究し、整合的な理論構成が可能であるとの認識に至った。これらに関しては、基礎付けの部分を込めて理論の概要は得られているが、実際の理論構成を行うためには細部を詰めてゆく作業が残されている。以上、概ね順調に研究が進んだと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的ではパンルヴェ階層の微分方程式を主なターゲットと設定していたが、研究を進める内に、より基本的な古典的微分方程式のパラメータ・ストークス現象解析が必要であるとの認識を得てこの方向に研究対象を広げて研究を行った。これらの対象に関しては期待以上の研究成果が得られたと考えている。現在はガウスの超幾何微分方程式に関して研究を行っているが、合流操作のみならず、確定特異点の個数を増やしたホイン型微分方程式や、その合流として得られるラプラスの潮汐方程式などに拡張できる可能性が広がってきている。これらの方程式の解に対するパラメータ・ストークス現象は、自然現象のシミュレーションの研究においても普遍的に現れるので、応用面を含め、今後の進展が期待される。パンルヴェ階層の方程式自体に対しては、本年度は第6階層に着手する計画を立てていたが、ここには至らなかった。原因は第6階層の方程式の一般的記述が、第1階層の場合の手法を適用可能となるような形では得られていないことにある。一方で、第1階層のインスタントン解構成に際して現れる小分母の問題に関しては、望ましい形に解決可能ではないかと感じさせる数式実験結果を幾つか得ることができた点は今後の研究に着実に繋がる成果であると考えている。擬微分作用素の表象理論の基礎付けに関しては、当初期待した可能性のうち、もっとも望ましい形で理論構成が可能であることが解ってきた。もともとの出発点は、素朴な積分路を使った核函数の合成が、コホモロジー理論から自然に定義されるものと食い違っていて、しかも正則域の要請を破ってしまうという問題点をいかに克服するか、というところにあった。これに関して、余分なパラメータの導入によって、素朴な積分路をコホモロジー的に正当化し、しかも正則域の要請を満たすように構成可能であることが解った。この点は今後の理論整備に大きな意味を持っている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には平成24年度に目標とした3つの課題のうち、達成できたものはその先に、道半ばのものは、引き続き課題解決に向けた努力を行いたいと考えている。第1の課題に関しては、研究実績の欄にも記したように、当初の目標はほぼ達成できたので、今後は合流操作により得られる合流型超幾何微分方程式に対して同様の研究を進める。合流型については先行研究がいくつか知られているので、それらとの関連も明確にしたい。また、現在行っている研究における大きなパラメータの導入方法は完全に一般的なものではないので、この点の一般化も行わなければならないと考えている。これにより退化した場合も込めて統一的な扱いが可能となり、散発的に行われている先行研究を高い次元から統合することが可能になると期待できる。また、確定特異点の数を増やすことも試みたいと考えている。これには大きな困難が伴うことは容易に想像できるが、超幾何微分方程式の場合に得られた種々の結果の内、幾つかのものはそのままの形で拡張可能であると期待できる。問題はアクセサリ・パラメータを如何に取り扱うか、特に隣接関係式の構成が可能かどうかが成否に係わる。第2の目標に関しては、平成24年度に得られた小分母の問題に関する予想の解明に重点を置きたい。これまでの研究で得られた高次方程式の母函数表示を活用すれば、肯定的な証明が得られるのではないかと期待している。さらに第6階層の方程式にも対象を広げたい。第3の目標については、平成24年度の研究で大筋の方針が得られているので、今後は幹の部分および詳細にわたる枝葉の部分の整備を行っていきたい。さらには、現状では取り扱う函数は正則函数のカテゴリーに設定しているが、今後の応用を見据えて、ホイットニー族の函数に制限した理論構築も目指したいと考えている。これが可能となれば、ジェブレイ族の超函数などへの応用可能性を広げることができる。
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