2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22540215
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
山ノ内 毅彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (30241293)
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Keywords | 関数解析学 / 作用素環 / 測度付き同値関係 / エルゴード性 / フォンノイマン環 / ヘッケ対 / 部分同値関係 |
Research Abstract |
測度付き亜群、特にエルゴード的同値関係は代数における群の概念を一般化したものとして時に捉えられる。本研究はこのような視点からの研究を柱としている。この視点に立つならば、群の理論で部分群の研究が重要であるように、エルゴード的同値関係の性質を把握するためには、部分同値関係を詳細に調べ上げることが有効になってくることが容易に想像できる。本年度はこのような動機からエルゴード的測度付き同値関係の部分同値関係に関する研究を行った。連携研究者である青井氏と研究代表者(山ノ内)は、前年度の研究で部分同値関係に対して「ヘッケ対」という概念を導入し、それに付随してフォンノイマン環が構成されることを明らかにしている。これは数論における「ヘッケ対」のコンセプトを同値関係の場合に拡張した概念で、実際にヘッケ対をなす部分同値関係が群-部分群のヘッケ対から「自然に」作られるものである場合には、このフォンノイマン環として通常のヘッケ環が現れる。このことから、一般のヘッケ対をなす部分同値関係も、群の場合と同様に豊かな構造を持つことが期待される。本年度はこの「ヘッケ対」についてさらなる研究を行い、幾つかの部分的な結果が得ることができた。一つは、ヘッケ対の定義を同値関係の「言葉」だけで与えることに成功したことである。もともとの定義は作用素環論の枠組みの中で与えられたが、本年度の研究では新たな観点に立った測度論的定義を与えることに成功した。もう一つの結果は、ヘッケ対に対するSchlichting完備の理論に関するものである。群-部分群のヘッケ対が与えられたとき、それからSchlichting完備という手続きを経て新たなヘッケ対を作り出す方法が存在する。本年度の研究では、ヘッケ対をなす部分同値関係が群一部分群のヘッケ対から作られるものである場合には、このSchlichting完備が測度論的な手段で実現されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」では、測度付き同値関係の「部分群」に相当する部分同値関係の構造と、エルゴード理論との係わり合いを明らかにすることを挙げたが、本年度は代表者が導入した部分同値関係のヘッケ対という概念に着目し、考察する同値関係たちがエルゴード性を満足しているときには、群論におけるSchlichting完備に関して部分な結果を得たからである。ただ、論文としてまとめるためにはこの結果をより洗練する必要があると感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
測度付き亜群、特にエルゴード的同値関係が代数における群の概念を一般化したものとして捉え、そのような視点を研究の柱として測度付き亜群を解析する方策は、目覚ましいとまではいかないまでも、今のところある程度の結果を納めることができた。従って、局所コンパクト量子群の解析も含め、今後もこのような観点からの研究を継続していくつもりである。
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Research Products
(1 results)