2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540215
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
山ノ内 毅彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (30241293)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 関数解析学 / 作用素環 / 測度付き同値関係 / エルゴード性 / フォンノイマン環 / ヘッケ対 / 部分同値関係 |
Research Abstract |
測度付き亜群、特にエルゴード的測度付き同値関係を代数における群の概念の一般化として捉えるならば、測度付き同値関係の理解・解析に群論的アプローチが効果的であろうことは想像に難くない。本研究は、このような視点から、群の部分群にあたるエルゴード的同値関係のエルゴード的部分同値関係を詳細に調べ上げることを研究の中心に据えている。連携研究者である青井氏と研究代表者(山ノ内)は、共同研究の中で導入した部分同値関係に対する「ヘッケ対」という概念について2年前に研究を開始した。これは数論における「ヘッケ対」のコンセプトをエルゴード的同値関係の場合に拡張した概念である。これまでの研究において、我々が定義したエルゴード的同値関係のヘッケ対は、予想通りに群ヘッケ対と様々な類似性をもつことが分かってきた。昨年度にかけて、ヘッケ対に対するSchlichting完備の理論について研究を開始した。群-部分群のヘッケ対が与えられると、その情報からSchlichting完備という手続きを経て新たな位相的ヘッケ対を作り出す方法が存在する。本年度の成果は、エルゴード的同値関係のヘッケ対が与えられたとき、その対から誘導される指数コサイクルの漸近的値域は群のヘッケ対を成すことを明らかにしたことである。通常、指数コサイクルは可算集合の変換群全体のなすポーランド群の中に値をとることを考えると、その漸近的値域が実は局所コンパクト群になっていることは特筆に値する。この特殊な現象を説明するため、ヘッケ対から誘導される指数コサイクルとして、極めて特別な性質をもつ指数コサイクルが構成されることも証明した。このことは今後のヘッケ対の研究に不可欠な道具となると確信している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」では、測度付き同値関係の部分同値関係の構造と、エルゴード理論との係わり合いを明らかにすることを目的の一つとして挙げた。本年度は、前年度に独自に導入したエルゴード的測度付き同値関係におけるエルゴード的部分同値関係の「ヘッケ対」という概念に着目した研究を行ったという意味で、研究目的に述べた意図に沿った研究を実行できたと思うからである。具体的には、考察する測度付き同値関係とその部分同値関係がエルゴード的であるとき、誘導される指数コサイクルの漸近的値域が群のヘッケ対をなすという意義ある成果が得られたことが理由である。この結果を関係する同値関係が群-部分群のヘッケ対から自然に構成されている場合に限定したとき、漸近的値域はもともとの群-部分群のヘッケ対のSchlichting完備として現れることが確認出来ており、今後の研究の新たな進展につながるものと期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
測度付き亜群を群の概念の一般化と考え、そのような観点からエルゴード的測度付き同値関係を、測度論(エルゴード論)的側面と作用素環論的側面の両方から同時に研究する方策は、今までのところおおむね当初期待していた程度の成果をもたらしている。特に、群をその部分群達から調べ上げるという群論では極めて素朴なアイデアをヒントに、エルゴード的測度付き同値関係をその部分同値関係達から解析する方法は、目覚ましいとまではいかないまでも、目下のところある程度の結果を納めていると考えている。従って、局所コンパクト量子群の解析も含め、今後もこのような視点からの研究を継続していくつもりである。
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