2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22540222
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
磯部 健志 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (10262255)
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Keywords | ディラック方程式 / 臨界点理論 / モース理論 / 共形はめ込み / 超対称性シグマモデル / 指数無限大 / 非コンパクトな変分問題 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、多様体上の非線形ディラック方程式を大域的変分解析の立場から研究した。この問題は、モース指数無限大かつ(非線形項と空間の次元によっては)非コンパクトな変分問題であり、数学的に非常に興味深い対象である。本年度は、超対称性シグマモデルと超曲面のユークリッド空間への共形的はめ込み(スピノル版のワイエルストラス表現定理を通して)に関連した非線形ディラック方程式(スピノル型山辺方程式)を通して、ディラック方程式を変分法的に扱う枠組みの構築を目指して研究した。 得られた成果は次の通りである。 1)超対称性シグマモデルの1次元版であるディラック測地線の存在を調べた。平坦トーラス上には、非線形項が2次の多項式よりも速く増大するという条件のもと、各ボゾンセクターに非自明なディラック測地線(ボゾン・フェルミオン(スピノル)のペア)が少なくとも一つ存在することを示した。また、負曲率多様体上では、非線形項が3次多項式よりも速く増大するという条件のもとで、同様の存在定理を得た。一般の多様体上では、一般的な形での存在定理は未だ証明できていないが、リーマン計量が"一般的"と言う条件のもとで、同様の存在定理を証明した。 2)超曲面のユークリッド空間への共形的はめ込みに関連してスピノル版山辺方程式を研究した。幾何学的には、与えられたスカラー関数を平均曲率として持つユークリッド空間への共形的はめ込みが存在するかどうかという問題である。これはスピノル版のワイエルストラス表現公式を通して、スピノル版山辺方程式の解の存在の問題に帰着される。本年度はスカラー関数が定数に充分近く、更にこれの臨界点とそのモース指数がある条件を満たす場合に非自明な解が存在することを示した。これは、この方程式の解の存在を与えたおそらく最初の結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ディラック測地線およびスピノル版の山辺問題に関しては、最初の存在定理を(まだ充分に満足にいく形からはほど遠くはあるが)、証明できたという点において、研究はおおむね順調に進展していると思う。
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Strategy for Future Research Activity |
ディラック測地線の存在に関しては、一般のコンパクト多様体上での(リーマン計量に"一般的"という条件をおかない下で)存在証明を目指す。また、本来の物理的に意味がある超対称性をもつ非線形項のデラック測地線の存在は本年度の研究では取り扱えていないので、この場合の解決を目指す。 スピノル版山辺問題に関しては、平均曲率が定数に近いという条件なしで存在定理を証明するのが当面の課題である。
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