2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540222
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
磯部 健志 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (10262255)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ディラック作用素 / ディラック方程式 / 山辺問題 / モース理論 / モース-フレアーホモロジー |
Research Abstract |
今年度はまず始めに、昨年度に引き続き、球面上のスピノル版山辺問題の解の存在を調べた。昨年度までの研究で、3次元球面上では他の次元では観察されない解析的な困難が生じることが分かっていた。本年度は、この解析的な困難を克服するために、昨年度から継続して研究していたスピノル版山辺汎関数に対するコンリー指数理論を部分的に完成させ、3次元球面上で指数数え上げ型の存在定理を証明した。 次に、ディラック方程式に付随したスピノル空間上の作用汎関数に対するモース-フレアー型の理論の構築に着手した。今年度は対象を優線形の方程式(作用汎関数に関していうと、優2次の増大を持つ場合)に限定して考察した。 得られた成果は大きく分けて2つである。第1は相対モース指数とコンパクト性の関係の解明、第2はあるクラスの優2次作用汎関数に対するモース-フレアーホモロジーの構成とその計算、である。 より具体的には、第1に関しては、非線形項が優線形で適当な凸性を持つ場合、解の相対モース指数の有界性とコンパクト性が同値であることを証明した。証明の過程で、非コンパクト多様体上でも意味を持つ相対モース指数の新たな定式化を与えた。この定式化はディラック作用汎関数のみならず、一般のヒルベルト多様体上定義された広いクラスの汎関数に対しても適用可能であるため、今後応用が期待できると考えている。 第2に関しては、あるクラスの優2次ディラック作用汎関数に対して、モース-フレアーホモロジーが定義可能であることを示し、ホモロジーの同型類はそのクラスに属する非線形項に依存しないできまることを証明した。これから優2次型のディラック-モース-フレアーホモロジーを定義した。次に、特殊な優2次型の非線形項を持つ作用汎関数に対して具体的にホモロジーを計算することで、優2次型ディラック-モース-フレアーホモロジーの消滅定理を証明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3次元球面上におけるスピノル版山辺方程式の解の存在に関しては、条件付きの下で指数数え上げ型定理形を証明したものの、この条件が本質的に必要なものであるかどうかは確かめる事ができなかったため、結果としては満足いくものではない。一方、デッラック作用汎関数に関するスピノル空間上のモース-フレアーホモロジーに関しては、ベキ型の非線形項を持つ作用汎関数の、有界な摂動の枠を超える一般的な優2次のクラスの作用汎関数に対して、モース-フレアーホモロジーを定義し、それを計算した。ベキ型の非線形項の有界な摂動を超える枠組みでの一般的なモース-フレアー型のホモロジーの計算は、申請者の知る限り、コンパクト多様体の余接バンドル上の2次のトネリハミルトン系かそれに関連するものが存在するのみで、それ以外はなく(優2次の汎関数のクラスでは皆無)、2次元以上の変分問題では最初のものではないかと思う。 以上、総合的に判断して、研究はおおむね順調に進展していると思う。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、昨年度までに得られたスピノル空間上の優2次ディラック作用汎関数のモース-フレアー理論に関する論文を執筆中である。今年度も引き続き執筆作業を行う。 それと平行して、デッラック作用汎関数が優2次でない場合のモース-フレアーホモロジーの構成を行うことを計画している。この場合、優2次とは異なるモース-フレアーホモロジーが得られる事を期待している。更に、関連する問題として、ディラック-測地線に対するモース-フレアー型のホモロジーの構成を行う予定である。これらを全て今年度中に実行することは時間的に不可能であると思われるので、今年度は次年度以降の研究につなげるための手がかりをつかみたいと考えている。
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