2011 Fiscal Year Annual Research Report
複素力学系の視点による有理関数のモジュライ空間の解析
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22540240
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
藤村 雅代 防衛大学校, 総合教育学群, 講師 (00531758)
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Keywords | 解析学 / 複素力学系 / 数式処理 / 有理関数 / モジュライ空間 |
Research Abstract |
複素力学系の理論に応用するため、有理関数のメビウス共役類からなるモジュライ空間の忠実な表現を与えることが本研究の目標である。平成23年度は、数式処理システムを用いた計算実験を交え研究を行った。有理関数に関して退化現象の解析を行い、起こりうる現象のいくつかを定式化した。 有理関数に関するGoldbergの問題(特異点集合に対応する有理関数の同値類の個数の決定に関する問題)に関する研究では、奈良女子大学の谷口氏、Kabur大のKarima氏との共同研究を進めてきており2010年にジェネリックな部分でBell族を利用することで個数決定問題が解けることを示したが、今回、有理関数の同値類すべてを記述できる"拡張Bell族"を定義し、それを用いることで得られた結果の発表をThe 19th International Conference on Finite or Infinite Dimensional Complex Analysis and Applicationsにおいて行った。今後、この問題を射影化することで、より統一的に解析を行うことができると期待している。 また、Julia集合の描画アルゴリズムDEMに使われる近似式の精度の評価に関する研究を防衛大の後藤氏、同研究科の吉田氏との共同研究として行い、現在用いられている手法においては最良といえる評価式を得ることができた。さらに、その評価式の下限を与えるJulia集合を持つ多項式と上限に近い値を持つ多項式の例を構成した。これらの結果は、それぞれ京都大学数理解析研究所研究集会と、日本数式処理学会において発表を行った。上限を与える例についてはまだ改良の余地があるので具体例の構成は今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の前半は大震災の影響による計画停電などにより、思うように計算実験を行うことができなかったが、秋以降にその遅れをカバーし、有理関数の退化現象の解析を進めるとともにGoldbergの問題に対する成果やDEMアルゴリズムの誤差評価などの結果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、過去2年間に行った研究を発展させるとともに、今までの計算実験の結果を分析し、適切な定式化を与えることで一般の場合の予想を立て、得られた予想に対して数学的な裏付けを与えることで目標の達成を目指す。その際、もし必要なら追加の実験を行い、予想の『精度』を高めたうえで数学的なアプローチを行う所存である。
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