2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540241
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Research Institution | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群) |
Principal Investigator |
高木 太一郎 防衛大学校, 応用科学群, 准教授 (00531766)
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Keywords | 数理物理 / 統計力学 / セルオートマトン / 可積分系 |
Research Abstract |
1. 周期的可積分セルオートマトン(CA)の分配関数に対するフェルミ型の公式を得たことが主な研究実績である。以下にその内容を説明する。 (1) 本研究はアフィン・リー代数に関連した周期的可積分CAを研究対象とする。それはソリトンと呼ばれる孤立波が相互作用しながら伝播する1次元CAであり、古典可積分系と量子可積分系を橋渡しする系の実現という点で重要な意義を持つ。 (2) 可積分CAは古典力学における完全積分可能系と同様に時間発展のもとで変化しない物理量の組である保存量をもつ。今の場合それは各振幅を持つソリトンの個数というデータである。与えられた保存量をもつような系の状態全体からなる集合を等位集合とよぶ。その構造を調べることが本研究の課題であった。 (3) 一方、統計力学の2次元可解格子模型では、角転送行列の方法により分配関数および1点関数が1次元状態和として計算され、ある場合にはそれはq二項係数をもちいた具体的公式(フェルミ型公式)として求められる。周期的可積分CAの状態に対しても、角転送行列に相当するエネルギーを用いた一種の分配関数を定義することができる。A型ランク1の場合に、等位集合上において定義されるその分配関数がフェルミ型公式で書き表せるという予想が得られていた。 (4) 計算機実験による予想のチェックを経て、様々な試行錯誤の末に予想を証明することができた。結果は論文にまとめ、専門誌において発表するとともに学会講演などでも解説した。この結果は「X=M予想」と呼ばれる良く知られた予想のある種の精密化を与えているという点で重要である。 2. 一方、ランク一般の場合の等位集合の構造の解明については計画通りの進展は見られなかった。原因は主として第1項の予想の証明を行うのに時間を大幅に費やしてしまったことにある。今年度はこちらの課題に取り組む予定で準備を進めている。
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Research Products
(5 results)