2011 Fiscal Year Annual Research Report
階層的巨大ブラックホール形成とファイナルパーセク問題
Project/Area Number |
22540243
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早崎 公威 京都大学, 理学研究科, 研究員(科学研究) (30374218)
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Keywords | ブラックホール / バイナリーブラックホール / 外周ガス円盤 / 降着流 / 重力波 |
Research Abstract |
銀河は、合体を繰り返し成長するという階層的構造形成シナリオに基づいて進化してきたことは良く知られている。同様にして、合体銀河の中で巨大ブラックホール同士が合体に向かって進化するとすれば、バイナリーブラックホールを形成するであろう。しかし、バイナリーブラックホールはこれまで同定されておらず、またどのような放射光を示すのか明確に分かっていない。これまでの研究で、バイナリーブラックホールとそれを取り囲む外周ガス円盤の相互作用によって周期的的な変動が見られることが分かっている。しかし、いずれの研究も軌道面と外周円盤面が同一平面にある系を対象にしてきた。そこで、今回は軌道面と外周円盤面が傾斜している系を考え、ブラックホールとガスの相互作用の結果、どのような放射光を示すのかを三次元Smoothed Particle Hydrodynamics法を用いて研究した。その結果、円軌道バイナリーブラックホールの場合、傾斜角がゼロの場合は、特別な変動を示さないが、傾斜角がある場合は、ダブルピークになることが分かった。 これまで、巨大ブラックホールの合体過程の研究を行って来たが、そもそもどのようにして太陽の10万倍以上の巨大ブラックホールが形成されるのか良く分かっていない。近年の研究では、その種となるブラックホールの質量は、星質量~中間質量であると考えられているが、種ブラックホールから中間質量ブラックホールに至るまでの過程はほとんど分かっていない。そこで、星質量~中間質量ブラックホール同士の合体過程の研究を、ガス円盤との相互作用に着目して行った。その結果、バイナリーから外周円盤への角運動量輸送を通してバイナリーから放射される重力波の位相にずれが生じることが分かった。本研究ではこのずれを具体的に計算し、検出可能性を議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、バイナリーブラックホールと周囲のガス円盤の相互作用の詳細を明らかにしファイナルパーセク問題を解くことである。今年度の取り組みは主に二つある。一つは、バイナリーからガス円盤への角運動量輸送の機構の一つを明らかにした。また、バイナリーブラックホールからの放射される重力波の位相が、外周ガス円盤との相互作用によってずれることを示した。本研究は論文を投稿中である。二つ目は、バイナリーブラックホールの軌道面と外周ガス円盤面が傾いている系におけるガスの降着過程を調べた。本研究は現在論文を執筆中である。いずれの研究も目的を達成する上で欠かせない研究と位置づけており、オリジナリティが高く質も高い研究である。したがって時間的及び資金的な投資に対して妥当な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては、1.バイナリーブラックホール周囲の外周ガス円盤の構造を解く。2.ガスの供給機構に目を向ける、の二つある。1では、外周ガス円盤とバイナリーブラックホールの相互作用を調べる主な手段として数値シミュレーションが用いられて来た。また解析的に解く場合でも、外周ガス円盤の構造は良く知られた標準円盤モデルが使用されてきた。そこで、我々はバイナリーから外周ガス円盤への角運動量輸送効率を表すパラメターを導入することによって外周ガス円盤の構造の解析解を導く。このパラメターの発見は、平成23年度の研究成果の目玉の一つである。2では、これまで外周ガス円盤の存在を仮定していたが、ガスの供給がどのようになされているのかに注目した研究である。例えば活動銀河核の中心へのガス供給のモデルはいくつかあるが、星がブラックホール周囲に落ち込むことで供給されるモデルに注目して研究を行う予定である。
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Research Products
(9 results)