2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540246
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅田 秀之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (60447357)
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Keywords | 恒星進化 / 超新星 / 電子捕獲率 / 原子核反応 / 元素合成 / 理論天体物理学 / 大質量星 / 超新星親星 |
Research Abstract |
当該年度はまず計画通り、本研究に必要な高速で計算効率の良い星の進化コードの開発を終えることができた。そのコードのテストも兼ねて、これを超新星親星など大質量星の進化計算に応用した。また、その親星のモデルを用いて1Dや2Dで爆発シミュレーションや元素合成計算を行い、合成、放出される^<56>Niの量を見積もり、非常に明るい特異な超新星2007biの起源について議論を行った。これらの成果は、学会や国際研究会で発表し、査読論文に投稿した。次に本研究の主要課題である太陽の10倍前後の星の進化計算を本格的に開始した。まず星の進化を0.01太陽質量ごとなど、非常に細かい間隔で計算を行い、鉄の核を形成する星の下限質量をおおよそ見積もった。このような限界質量に近い星の進化は複雑なため、まだ未解決の問題が多く残されている。 まずは、進化の最後の殻燃焼の様子である。このような星では酸素、またはケイ素燃焼が中心をはずれたオフセンターで起きる事が知られている。そこでは酸素やケイ素の殻燃焼が発生するが、この殻燃焼は電子の縮退の効果のため時に爆発的になるのではないかと言われているが、その詳細は未だ定かでない。この殻燃焼は燃焼に伴う膨張と、膨張冷却による燃焼停止を繰り返しながらしだいに燃焼面が中心に伝播していく。このような計算は非常に時間がかかること、またそもそもケイ素燃焼以降の計算を核反応ネットワークを詳しく解いて行っている研究グループは世界でも限られた数しか無いことからその後の進化がどのように進むのか詳細にはわかっていない。我々は幾つかのケースについて中心までの燃焼面の伝播の計算を行うことができた。また、中心核付近では電子捕獲が実際に起き始めることを確認できた。これらは24年度以降の計算を進める上での重要な進展である。これによって、この質量範囲の星の進化の末期の爆発的殻燃焼の有無や、実際にどのように観測されるか、また中心付近の電子捕獲が星の進化に与える影響について本格的な計算を始めることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、計画通りにこの研究を遂行するために不可欠であった、これまでよりも遥かに効率よく計算を進めることができるコードの開発を終了できた。そのコードを超新星親星をはじめとする大質量星の進化計算に適応し、結果を国際研究会で発表し、査読詰に投稿することができた。更に、そのコードを用いて太陽の8-10倍の星の進化を、新しく加わった大学院生と進めることにより想定よりも早いペースで研究を進める事ができ、実際に電子捕獲が始まる段階まで星の進化計算を進める事ができるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこの研究での中心課題となる高密度の中心核で電子捕獲反応が起きる場合について計算を進めるためのコードの抵張とそれを用いた計算が主となる。そのために、まずコード内の核反応ネットワークを拡張し、関係するすべての電子捕獲反応が含まれるように改良する。また現在のコードでは厳密に計算されていない、電子捕獲に伴うエネルギーの発生や吸収をコードに取り入れる。電子捕獲が起きている領域に対流が発生すると、計算にはさらなる正礁さが求められるようになる、それは電子捕獲元素が対流で外に運ばれると逆反応が起きるが、どちらの反応もニュートリノ放出を伴うため冷却が強く進む。これは対流URCA反応と呼ばれるが、この効果を計算するためには対流と核反応を同時に解く必要が生じるため、そのようなコードの改良を行う。これらの開発ののち、電子捕獲反応が起きている星の進化計算を進めていく。
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Research Products
(13 results)