2011 Fiscal Year Annual Research Report
大マゼラン雲の多波長広域観測による星間物質の網羅的研究と星の形成条件の理解
Project/Area Number |
22540250
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
河村 晶子 国立天文台, ALMA推進室, 研究員 (30377931)
|
Keywords | 電波天文学 / 星間分子雲 / 星形成 / 大マゼラン雲 |
Research Abstract |
本研究では、最も近い系外銀河である大マゼラン雲に着目し、星間ガスの諸相、分子・原子・イオンの空間分布・物理学的性質を観測的に克明に調べる。さらに、最新の赤外線データから、星間ダストの性質や若い進化段階にある星についての情報を取得し、水素原子ガス等既存のデータを合わせて比較を行い、星間物質諸相の基本的性質を明らかにし、ひとつの銀河にわたる星間物質の進化と星形成についての理解を深めることを目的としている。今年度は、NANTEN2によるミリ波観測研究の推進に向けて、名古屋大学、大阪府立大学および国立天文台の研究協力者とともに、NANTEN2に100GHz帯受信機システムを搭載し、試験や議論に参加した(現地作業は主に名古屋大学スタッフおよび大学院生)。また、分子雲カタログを作成するため、既存の大マゼラン雲のCO(2-1)観測データについて解析を進めた。スーパージャイアントシェルLMC4とLMC5に付随する、大質量星/星団形成領域について、ASTEによる12CO(3-2)を進め、シェルや同方向の星形成活動と、12CO(3-2)/12CO(1-0)比の分布を調べた。また、スピッツァ赤外線天文衛星による大マゼラン雲の分光観測データを、研究協力者とともに確認し、公開した。さらに、ハーシェルおよびプランク望遠鏡による星間ダスト、若い進化段階にある星の調査100-500ミクロンの遠赤外線全面探査の観測およびデータ処理をすすめた。特に、プランクによるデータから、大マゼラン雲には、現在観測されている水素原子ガス(HI)と、一酸化炭素からみつもられる水素分子ガスの量では、説明できない、「ダークガス」が無視できない質量で存在していることが明らかになった。また、研究協力者とともにアタカマミリ波サブミリ波大型干渉計計画(ALMA計画)への観測を提案し、取得されたデータについて解析を始めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NANTEN2によるミリ波、サブミリ波観測の準備は進展しており、望遠鏡が設置されたチリ アタカマ高地の悪天候により観測自体の進捗が遅れているが、一方既存のデータの解析が進んでいる。また、赤外線天文衛星によるデータ処理は、協力研究者とともに進められ、一部のデータ公開が進み、分子、原子ガスと、星間ダストとの比較による論文も出版されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
チリ アタカマ高地の悪天候は、関係する各種プロジェクト、特に高周波数での観測に影響し、進捗が遅れる可能性が高い。そこで、ミリ波のデータによる大規模なサーベイによる分子雲カタログを充実させ、サブミリ波観測の領域を吟味、選択する。さらに、天候の影響を受けない、天文衛星のデータを十分活用する。
|
Research Products
(20 results)