2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22540262
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
萩野 浩一 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20335293)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 中性子過剰核 / 対相関 / 双中性子相関 / 反応断面積 / 重イオン核融合反応 / 核変形 / 3体模型 / グラウバー理論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、弱束縛中性子過剰核における核子間対相関とその対移行反応への影響を解明し、強い双中性子相関を実験的に探るための方法を探索することである。これに関連し、本年度は以下の研究成果を得た。1)昨年度に引き続き、中性子過剰核 31Ne の構造を粒子回転子模型を用いて解析し、芯核 30Ne の回転の効果を議論した。特に、この模型に基づき、グラウバー理論を用いて 31Ne 核の反応断面積の計算を行い、反応断面積に対する変形の効果を議論した。この計算により、昨年度行ったクーロン分解の解析で決定された配位は反応断面積に関しても実験データとコンシステントであることを確認した。2)11B 核における 11Li 核のアイソバリック・アナログ状態に対する実験データを3体模型を用いて解析した。計算されたクーロン変位エネルギーは実験データをよく再現し、11Li の3体模型の妥当性が確認された。3) 陽子‐中性子対相互作用に関連し、19F_Lambda 核の構造を3体模型を用いて記述し、励起状態から基底状態への電磁遷移確率がラムダ粒子の混入によりどのような影響を受けるのか議論した。6Li 核でみられた事実と同様に、ラムダ粒子の混入により電磁遷移確率が小さくなるとともに、励起エネルギーも減少することを明らかにした。4)これに関連し、N=Z 核のガモフ・テラー遷移の計算を準粒子乱雑位相法を用いて行い、テンソル力が重要な役割を果たしていることを明らかにした。5)この他に、関連課題として、低エネルギー重イオン核融合反応における非集団励起の効果、極低エネルギーにおける核融合断面積の抑制現象の解析、原子核の基底状態に対するグローバルな計算に適した対相関力の構築、に関する研究も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は関連課題で複数の原著論文を発表したものの、交付申請書に記載した2陽子放出崩壊現象及び変形した中性子過剰核の反応断面積の2つの課題とも予想よりやや時間がかかっている。反応断面積に関しては粒子回転子模型による解析に少々手間取り、Hatree-Fock-Boboliubov (HFB)法による解析が最近ようやく端緒についたところである。変形核の反応断面積を計算する際に角度積分をあらわに実行しなければならないが、その数値計算のチェックに時間を要したためである。ただし、今年度行った研究により反応断面積に対する断熱近似の妥当性が確認されたので、HFB法を用いた計算にスムーズに移行できる見込みである。2陽子放出崩壊現象に関しては、対相関相互作用及び崩壊前の初期状態の用意の仕方に関する検討を行っていたため結果が出るまでに少し時間がかかったが、最近ようやく実験と比べられるような結果が出始めてきた。今後、2陽子放出崩壊現象に対する双陽子相関の役割について明らかにしていく。これらの交付申請書に記載した課題に取り組む一方で、陽子‐中性子対相関に関する研究や低エネルギー重イオン核融合反応をはじめとして関連課題の研究に関しては順調に進めることができた。特に、本研究計画で行ったボロミアン原子核 11Li に対する3体模型計算を適用し 11B 核のアイソバリック・アナログ状態の実験データをコンシステントに説明することができたことは大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、「現在までの達成度」に記載した2つの課題は、現在順調に進行中であり、平成25年度中にまとまった成果がでる見込みである。これらの現象のより深い理論解析から対移行過程に関する知見が得られることが期待される。また、2陽子放出崩壊現象と類似の現象である中性子過剰核の中性子放出崩壊現象に関して、ボロミアン核の電磁遷移の計算で用いた手法を拡張して理論解析を行うことを現在検討中である。この現象は中性子ドリップ線を越えた非束縛中性子過剰核から2つの中性子が放出されて崩壊する現象であり、ある意味では対移行反応の逆過程とみなすこともできる。2つの中性子放出過程が1つずつ連続的に起きているのか2つ同時に放出されるのかが明らかになれば、対移行反応の反応機構の解明も大きく前進することが期待できる。また、平成25年度は本研究計画の最終年度であり、これまでの研究成果を踏まえたうえで、本研究計画の最大の課題である対移行反応の解析そのものに取り組み、対相関及び双中性子相関の果たす役割を明らかにする。このために、2陽子放出崩壊及びボロミアン核の核力分解に対する1次元3体模型計算で得られた知見を基に、半古典近似の考えに基づく計算を行う予定である。具体的には、2つの原子核間の相対運動に古典軌道を仮定して外殻中性子に対する時間に依存するシュレーディンガー方程式を解く。散乱核に対する様々なセットアップで理論計算を行うことによって、反応機構が複雑でこれまであまり理解されていなかった対移行反応のダイナミックスが明らかになることが期待できる。
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Research Products
(19 results)