2010 Fiscal Year Annual Research Report
確率微分方程式を用いたFermi、CTA時代の宇宙線起源伝播モデルの構築
Project/Area Number |
22540264
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
柳田 昭平 茨城大学, 理学部, 教授 (40013429)
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Keywords | 宇宙線 / 電子成分 / 超新星 / 確率微分方程式 |
Research Abstract |
銀河宇宙線の伝播モデルの構築にあたり、本年度は宇宙線電子成分に対する太陽糸近傍の超新星残骸の寄与に着目し、エネルギー損失や宇宙線源マップに関して予備実験段階から進めていたtoy modelでのシミュレーション実験に改良を重ねた。 高エネルギー電子はシンクロトロン放射や逆コンプトン散乱によるエネルギー損失量が大きく、地球近傍に到達できる高エネルギー電子成分の大部分は太陽系近傍の超新星残骸を源としていることが示唆される。しがたってエネルギースペクトルの高エネルギー領域の状態は源とする超新星残骸の場所や発生時期、あるいは放出エネルギー量などの影響を強く受けていることが予想でき、シミュレーション実験によってこれを再現することで、太陽系近傍にある宇宙線源を考究することができる。 確率微分方程式を用いた我々の計算手法は、地球近傍に到達した宇宙線の軌跡とエネルギー変化を時間に対して逆向きに解くことで、地球近傍で観測される宇宙線エネルギースペクトルに対する個々の超新星残骸(discrete source)の寄与を計算することができる。この原理のもと、過去50万年の間に太陽系から1kpc以内の距離に発生した超新星残骸に実際に観測されているものを想定し、またシンクロトロン放射、逆コンプトン散乱によるエネルギー損失を想定して宇宙線電子成分の伝播過程を計算した結果、地球近傍で観測されるエネルギー数100GeV以上の電子成分の大部分は太陽系近傍の比較的若い超新星残骸(Cygnus Loop、Vela、Monogem、Loop1、Geminga)を起源とし、TeV領域に存在するエネルギースペクトルのカットオフは超新星残骸における電子のカットオフエネルギーが約2TeVであるとうまく説明できるという結果を得た。本研究成果は日本物理学会2010年秋季大会で報告した。
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