2013 Fiscal Year Annual Research Report
確率微分方程式を用いたFermi、CTA時代の宇宙線起源伝播モデルの構築
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22540264
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
柳田 昭平 茨城大学, 名誉教授 (40013429)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 宇宙線 / 伝播 / 確率微分方程式 |
Research Abstract |
AMS-02による1-500 GeV/nのエネルギー領域のB/Cの最新の観測結果を再現する拡散平均自由行程の値をKaichnan, Kolmogorovの星間空間の乱流モデル、およびBohmモデルについて求めた。この際計算値を1 GeV/nでのAMS-02の結果に規格化した。この規格化は、1 GeV/nでのsolar modulationの影響が、平均場近似では5%以下と見積もられるからである。その結果AMS-02のB/C比の観測結果はKraichnanのモデルにより最も良く再現されることを確認した。 代表的二つの規則的銀河磁場モデル、ASS(axisymmetric spiral), BSS(bisymmetric spiral)磁場中でのドリフト運動が、源である超新星から太陽系に到達する宇宙線の伝播に及ぼす影響を調べた。太陽系内での惑星間磁場中のドリフト運動が太陽変調現象、特に電荷依存性の22年周期現象に決定的な影響を及ぼすのに対し、これら二つの規則的銀河磁場中ではドリフト運動の影響は、予想に反して大きくないことを突き止めた。これは特徴的拡散距離を1 k pcと仮定し、拡散の平均自由行程をB/Cの知見から得られた値を用いた拡散速度の方が、規則磁場中でのドリフト速度の100倍以上と予想されることから定性的に理解される。またこの一連のシミュレーションに基づいた考察を進める中でASS, BSSモデル磁場は、ともにその勾配がゼロでない(divergence freeでない)こと、すなわち物理的に許されないことに気がついた。 超新星残骸で加速された宇宙線のエネルギースペクトルが、地球近傍で観測される宇宙線のエネルギースペクトルよりかたい原因が宇宙線の再加速にあると仮定したときの、再加速エネルギーの解析解を求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AMS-02による1-500GeV/n領域のB/C比の観測値を再現することに成功し、同時に求めた拡散自由行程の運動量依存性が、星間空間中での乱流磁場がKolmogorov型ではなく、Kraichnan型であると予想されることをつきとめた。 ASS, BSSの二つの規則的銀河磁場中での銀河宇宙線伝播過程での ドリフト運動を初めて調べ上げた。結果は太陽変調の場合とことなり伝播への影響は小さいと判明したが、今後の陽電子、反陽子の起源伝播の研究には重要な知見を得たと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
概要の項で触れた再加速の解析解が現実の銀河系内で実現されるか数値実験で確認する。連立確率微分方程式で運動量変化を記述する式に、運動量空間での拡散項を入れ、様々な形の拡散係数を採用し現実解を探る手法を採用する。銀河風の効果を系統的にシミュレートする。またdivergence freeではないASS, BSSに替えて、freeであることを確認したJansson, Farrarによる銀河の規則磁場中でのドリフト運動を調べる。またこの磁場モデルを採用して、拡散係数に磁場依存性を入れた場合の拡散の様子の違いをシミュレートする。
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