2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540265
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
谷口 裕介 筑波大学, 数理物質系, 講師 (60322012)
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Project Period (FY) |
2010-10-20 – 2015-03-31
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Keywords | 格子理論 / smearing / 非摂動論的繰り込み / 有限温度QCD / 相転移の次数 / SF scheme |
Research Abstract |
本研究の目的は、Schrodinger functionalを主軸にして、格子上の非摂動論的な繰り込みと、非摂動論的な繰り込み群の流れを用いた有限温度QCDの相転移次数の研究という二つのテーマに取り組むことにある。 第一の目標は、三つのクォークを含んだ格子上のNf=2+1フレーバーQCDにおける各種の重要な物理量をSchroedinger functional処方を用いて非摂動論的に繰り込むことにある。 こちらのテーマに関して昨年度は、step scaling function (SSF)の格子間隔依存性が小さく保たれる、性質の良い格子作用の探索を目的として、smearingを導入したクォーク作用におけるclover項に対する非摂動論的な補正の調査を行った。その結果、格子間隔を約1 fmに保った状況で、smearingの回数を変化させた時の、clover項の係数の値を非摂動論的に求めることができた。 第二の目標は、QCDの有効理論である中間子理論の繰り込み群の流れを調べることにより、QCDの有限温度相転移の次数を決定することにある。 こちらに関しては、2個のクォークを含むNf=2 QCDにおいて、SU(2)xSU(2)のカイラル対称性の他にアノマリーで破れていたU(1)A対称性も有限温度で回復する可能性が高いことが、昨年度の我々の研究から明らかになった。有限温度において回復する対称性の種類は有限温度相転移の次数に強い影響を与え、我々の結論からはNf=2 QCDの相転移の次数は一次であることが強く示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
smearされたgauge linkを持つDirac operatorの導入は格子QCDの数値計算の分野では必須であると考えられている。そのような格子作用のうちで実用時に必要となるO(a)の格子間隔誤差を改良した作用を優先的に確定させることを行った。特に作用を定める上で必須となる係数を非摂動論的に求めたことは、順序としても正しく、意義深いことである。 一方、有限温度相転移の次数の研究に関しては、第一の目標であるU(1)A対称性の回復を示す点まで進展を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は確定された格子作用を用いて、非摂動論的に改良されたsmearedクォーク作用におけるクォーク質量の非摂動論的なくりこみ定数を求める予定である。特に最近gradient flowを用いた非摂動論的なくりこみが提案されていることから、この手法を用いた効率的な導出を予定している。 一方、有限温度QCDに関しては、相転移の次数に関する議論は現時点では摂動論的な繰り込み群の流れに基づいているが、最終的には非摂動論的な調査が必要となる。 今年度は、非摂動論的な繰り込み群の流れを用いた調査を始める予定である。
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Research Products
(4 results)