2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540270
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
伊藤 克美 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50242392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 尤二 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50151262)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 厳密くりこみ群 / ゲージ対称性 / 場の理論 |
Research Abstract |
本来ゲージ対称性を持つ系を厳密くりこみ群を用いて取り扱ったときに、くりこみ群のフローにおいてゲージ対称性をどう維持するのか、あるいは、できるのか、を理解することを研究目的としてしている.場の理論を厳密くりこみ群を用いて扱うときには、ウィルソン作用と有効平均作用という二つの同等な作用があり、それぞれ特徴を持っている.すなわち、前者では対称性を理解しやすく、後者はフローの扱いに有用である.本研究では、前者においてゲージ対称性による作用への条件を導き、それを後者の作用の条件として書き直した後で、くりこみ群のフローを検討することを目指している. 2012年3月から現在まで、量子電磁気学を典型的な模型として採り、この問題を具体的に検討しているところである.この研究は、汎関数くりこみ群の方法を用いた研究グループのリーダーでもあるハイデルベルグ大学のパブロスキー氏との共同研究である. 厳密くりこみ群の方法では運動量切断を導入するために、ゲージ対称性が破れてしまうと理解されている.しかし、ゲージ対称性が失われるのではなく、変形されて系の中に残されている.五十嵐・伊藤のこれまでの研究成果を用いると、この変形されたゲージ対称性は具体的に書くことができる.これを利用して、ウィルソン作用に対する条件を書き下した.現在のところ、ウィルソン作用は場の展開の低次のところのみを採っている.また、神戸大学の園田英徳との研究から、ウィルソン作用と有効平均作用との関係も陽に理解されているので、これを用いてゲージ対称性の条件のついた有効平均作用を得ている.ここまでがこの1年で明らかにしたことである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な系について書かれたウィルソン作用と有効平均作用の関係は、思いのほか煩瑣であった.これは、厳密くりこみ群を用いた多くの研究で採用される局所ポテンシャル近似(つまり場の微分項を落とす近似)を、両方の作用で同時に満たすことが原理的にできないことと関係している.一般論をこえて、具体的な系の検討には必ず何らかの近似が必要になる.作用の近似形の採用については今後何らかの判断が要求されると考えている. このことも含め具体的な系について検討を加えることで理解したことは多い.パブロスキー氏は厳密くりこみ群を用いて非可換ゲージ群も含めたいくつかの系について研究してきている.彼の持っている経験を共有できたことは非常に有益であった.
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Strategy for Future Research Activity |
厳密くりこみ群における対称性の扱い、特にゲージ対称性の扱いは、この分野の研究者にとって、困難な問題のひとつとして残されている.ゲージ対称性の扱いについて、理論のフォーマルな部分は簡潔な形に書くことができる.しかし、場の理論を具体的に扱うと、必ず、近似の問題を検討することになり、フォーマルな議論で見えていた簡潔な構造が見えにくくなる.この部分の見極めが今後最も重要になると思われる. 研究実績の概要の項に述べたように、有効平均作用に対してのゲージ対称性の条件をほぼ理解した.今後はくりこみ群のフローを具体的に検討することになると考えている.今後検討すべきこととしては:1)ゲージ対称性の条件を利用したフローと、その条件を考慮しない従来のフローとの比較;2)特に、運動量切断をゼロに持って行ったときのフローの振舞いの理解、などである.ただし、有効平均作用を用いたくりこみ群のフロー方程式において、割合標準的に用いられている有効平均作用に対してとられる仮定に、十分理解されていない問題が残されている可能性があり、現在検討している.
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