2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540272
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
川村 嘉春 信州大学, 理学部, 教授 (10224859)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 余剰次元 / 素粒子 / 統一理論 / 超対称性 / 超弦理論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高次元時空に基づいて素粒子の性質や法則を解明することにより標準模型を超える現実的な理論を発見し、宇宙の謎を解き明かすことである。 研究計画の1つとして「余剰空間を有する時空上で標準模型を超える現象論的に優位な模型の構築とその起源の探究」を掲げた。これに対して、「オービフォールドを余剰次元として含む高次元のE6ゲージ対称性を有するゲージ理論に基づいて、標準模型の物質粒子がどのような形で導出されるか」という問いかけに対して、従来、提案されていないような答えを与えることを目標とした。 研究成果として5次元および6次元時空上のE6ゲージ対称性に基づく大統一理論を出発点に取り、27次元表現の物質粒子から、余剰次元に関する境界条件を課した後に生き残る標準模型の物質粒子について分類を行った。さらに、その中で興味深いと思われるSU(5)×U(1)×U(1)ゲージ対称性を有する模型に関して、その特徴を調べ検証可能性について議論した。その結果、4次元時空の理論では実現しないような形で標準模型の物質粒子が導出される(より正確には、27次元表現の物質粒子の内、質量を獲得せずに電弱スケールまで生き残る)模型を見つけた。さらに、その模型が超対称性を有する場合、標準模型の粒子のスーパーパートナーの質量の間に模型固有の関係式が成立し、将来、スーパーパートナーが発見されそれらの質量が測定されたならば、それらを用いて模型の成否を検証できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現実的な理論の条件として、「標準模型を超える理論において様々な対称性が破れた後に、標準模型の物質粒子が電弱スケールにおいて生き残っていること」を挙げることができる。標準模型を超える高エネルギーの理論として大統一理論で有望視されている。実験によりゲージ相互作用の統一が示唆され、様々な模型が提案されている。本研究では時空構造の拡張により従来の理論では実現しないような物質粒子の生き残り方を発見することを目標とした。実際、4次元時空の理論では実現しないようなものを見つけた。このように目標に対して一定の成果が得られたため上記のような評価を下した。
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Strategy for Future Research Activity |
「なぜ、CP不変性は強い相互作用においてよく保存しているのか?(強いCP問題)」、「電弱スケールの起源は何か?量子補正の下での安定性を保つ機構は何か?(自然さの問題)」、「なぜ、重力がゼロの極限で時空はミンコフスキー空間なのか?」、「暗黒物質や暗黒エネルギーの正体は何か?」、「どのようにして、宇宙が誕生したのか?」などの謎に対して、余剰次元、超弦理論やM理論の研究成果や未知の概念に基づいてさらに考察を深める。特に、自然さの問題とその周辺について、いろいろな角度から再検討し、標準模型を超える物理をより多面的に探求する。
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Research Products
(5 results)