2011 Fiscal Year Annual Research Report
超重力理論から創出される非等方インフレーション宇宙の研究
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22540274
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
早田 次郎 京都大学, 理学研究科, 准教授 (00222076)
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Keywords | 非等方インフレーション / 非等方性 / 宇宙背景輻射 / ベクトル場 / 偏光揺らぎ |
Research Abstract |
宇宙背景輻射観測衛星WNAPによってインフレーション理論の枠組みの正しさは検証されたと言っても過言ではない。これにより宇宙論は精密観測の時代に入った。パーセントレベルの観測でどのような微細構造が現れ、そこにどのような基礎理論の痕跡が潜んでいるのかを明らかにすることが重要となっている。本研究は素粒子の標準理論に常に現れるベクトル場がインフレーションモデルにどのように寄与するのかを明らかにし、その予言を宇宙背景輻射観測衛星PLANCKによって検証することを目的とする。具体的には、ベクトル場による非等方インフレーションの基礎理論構築と宇宙背景輻射への予言、観測データとの比較検討を行うことを目的としている。 本年度の研究計画のメインは、非等方インフレーション宇宙を様々な方向に拡張することにあったが、目的は完全に達成することができた。これまでに非アーベルゲージモデルへ拡張可能なことを示し、さらにベクトル場が複数ある場合への拡張に成功した。特に、非等方性を最小にするようにベクトル場が時間発展することを明らかにした。これは宇宙無毛予想の変更を迫る重要な成果である。また、宇宙背景輻射のスペクトルの非等方性、曲率揺らぎと重力波の相関が、CMBの相関関数にどのように現れるかを明らかにした。特に、温度揺らぎと偏光揺らぎの角度パワースペクトルの非対角成分の計算に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、非等方インフレーションの観測的検証を目指していたが、理論的な基礎に関してはほぼ研究は完成しており、すでに観測に対する予言も行っている。当初の計画はかなり欲張ったものであったが、それにも関らず、想定したよりも進展が早かった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は、順調すぎるくらいに進展していて、残された課題は揺らぎの非ガウス性の評価とPLANCKのデータとの比較くらいである。残念ながら、PLANCKのデータリリースは遅れており、本研究期間内に比較検討するまでには至らないであろう。今後は、非ガウス性の研究と非等方インフレーションの弦理論への埋め込みの可能性を研究することになる。
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