2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540284
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
日置 善郎 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 教授 (90173129)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大熊 一正 福井工業大学, 工学部, 准教授 (80367507)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 非標準相互作用 / トップクォーク / LHC / レプトン分布 |
Research Abstract |
本研究の目的は,陽子陽子衝突型加速器(LHC)等において,トップクォーク対生成などの断面積を,特定の模型に依存しない最も一般的な形で計算し,非標準相互作用の存在可能性を探ることである.この戦略の特色は,どのような実験データが出ようとそれに素早く対処できる「模型に依存しない解析」を行うことである.我々は,「標準模型の背後にはΛというエネルギースケールで特徴付けられる基本理論が存在し,Λ以下の世界はSU(3)×SU(2)×U(1)という対称性に従う有効相互作用で記述される」という枠組みを採用している. 昨年度は,種々の分布に対する最適観測量解析を実行し,未知パラメータ測定において期待される統計誤差を実際に数値的に評価するという研究を行ったが,今年度は,「これまでの成果を,より具体的な解析に応用する」ことを目標に掲げた.特に,LHC において衝突エネルギー 7 TeV だけでなく 8 TeV のトップ対生成断面積が公表され,米国フェルミ加速器研究所 Tevatron からの最終的なデータと組み合せればトップクォーク-グルオンの非標準相互作用に対して新たな制限を課すことが可能になりつつある今,我々の解析を最新データに基づき進めることは喫緊の課題と言える. 実際の研究も予定通りに進み,トップクォークが持つ可能性のある非標準的性質を表す二つの未知パラメータ Chromomagnetic dipole moment 及び Chromoelectric dipole moment に対して,これまでよりも強い制限を見出すことが出来た.その内容は,アメリカ物理学会誌の一つ Physical Review D に掲載されている.また,これらの成果に関しては,国内研究会に加えて国際会議においても発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標は「これまでの成果を,より具体的な解析に応用する」であったが,実際の研究も計画通りに進めることができ,新しい結果を得た.それによれば,現段階では標準理論の枠を超える相互作用の兆候は見えておらず,そのような「非標準相互作用」が存在できる領域が非常に厳しく制限されることが明らかになった.より具体的には,トップクォークが持つ可能性のある非標準的性質を表す二つの未知パラメータ Chromomagnetic dipole moment 及び Chromoelectric dipole moment に対して,これまでよりも強い制限を見出すことが出来た.また,それに対応して,これからも LHC の実験データの精度が上がり続ければ,近い将来には,新相互作用を特徴づけるエネルギースケールについても制限(下限)が得られるであろうことも分かった.これは具体的なモデル構築に対して大変に有用な情報となる.これらの成果内容は,アメリカ物理学会誌の一つ Physical Review D に掲載されている.また,これらの成果に関しては,国内研究会だけでなく,国際会議においても発表を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画の最終年度となる今年度は,「より現実的な実験条件も考慮して,最終的に達成できる解析精度を明らかにする」ことを目標に掲げる.LHC において衝突エネルギーが 7 TeV → 8 TeV → 14 TeV と上がることが実現間近となった現在,これまでの解析内容を再点検し,それを現実的な実験条件の下で再解析することは極めて重要と考える.特に,終状態レプトン分布の角分布解析において,運動量に対する制限を課すことによって「脱結合定理」の制約から逃れた解析を行うことは,我々に新しい情報をもたらしてくれることを期待させるものである. 脱結合定理とは,本研究の代表者〈日置〉らが発見していたもので,トップクォークのような重い粒子の生成・崩壊で生まれる軽粒子の角度分布は,崩壊過程に含まれる可能性のある非標準結合の影響は受けないというものである [1].しかしながら,終状態の軽粒子(ここではレプトン)の角分布を求める際に行うエネルギー積分を限られた区間で実行した場合には,この定理は成立せず,崩壊結合への依存性が回復する. 当初の計画では,トップ対の両方が半レプトン崩壊する反応に対して終状態のレプトン対に関する二重エネルギー・角分布を解析的な形で計算し,それに対して最適観測量解析法を適用するのが次の計算課題であったが,これまでの結果から判断し,終状態二重分布に対して最適観測量解析法を適用しても高い解析精度は期待できないであろうことが明らかになってきたことに加え,LHC での測定が極めて順調に進み期待以上に豊富なデータが出されつつあることを考えれば,上記を最終年度目標とすることが適切かつ重要と判断する. [1] B. Grzadkowski and Z. Hioki, Phys. Lett. B476 (2000) 87; B529 (2002) 82; B557 (2003) 55.
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Research Products
(3 results)