2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540285
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
清水 良文 九州大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (90187469)
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Keywords | 高スピン原子核状態 / エキゾチック変形 / 正四面体型変形 / 量子数射影計算 |
Research Abstract |
本研究では、通常の原子核にはないエキゾチックな変形として高次の群論的対称性を持つ正四面体型変形状態が存在しうるかどうかを調べている。この変形状態は、通常の球対称性を破るだけでなく、軸対称性やパリティーといった基本的な対称性を破っており、特徴的な集団回転状態が現れると期待される。 このような回転状態を理論的に研究するために、昨年度は最も一般的な変形状態から量子数射影を行う計算プログラムの開発に着手し、それをほぼ完成させたが、今年度の前半では主にこのプログラムに現実的な計算が可能になるよう改良を重ねた。特に、信頼性の高い計算を行うために、大きな模型空間での平均場の波動関数を取り扱う新しい方法を開発したが、それが実際に正しく機能することを確かめた。さらに、この正四面体型変形状態などのエキゾチックな変形の研究の第一人者である、J.Dudek氏によるWoods-Saxon型平均場プログラムによる正四面体型変形平均場を用いて、始めて正四面体状態回転バンドの計算に成功した。 その計算スペクトルは確かに群論的対称性を反映したものになっているが、この対称性は厳密には破れており群論的な縮退は解けている。群論的考察ではどのパリティーの状態がより低くなるかなどは予想できないが、量子数射影計算によって、どのパリティーの状態がイラスト状態に現れるかを明らかにすることができた。正四面体型変形が小さい時は、角運動量の二乗に比例する回転バンドにはならないが、変形度が大きくなるにつれて規則的な回転バンドに成長することが示された。しかし対相関が小さいにもかかわらず、その慣性能率は剛体値に比べて半分以下の大きさであり、通常の原子核の回転との違いを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
同テーマで研究を進めている大学院生が修士論文を書き上げ、その過程で計算プログラムの開発が予想以上に進んだことが大きい。また、本研究費で導入した計算機が非常に役に立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究で理論的研究の道具立ては揃ったので、来年度以降は正四面体型変形状態の現実的計算を行い現実に存在する可能性を探る。本年度は、陽子数と中性子数が40と70近傍の比較的軽い原子核についての計算のみを行ったが、予言されているより重い原子核での計算を進め、できるだけ実現される可能性の高いと考えられている原子核の正四面体変形回転スペクトルを予想したい。また、エネルギースペクトルだけではなく電磁遷移確率の計算も同時に分析し、新しい実験データが出てきた場合に正四面体型変形状態の同定に役立てたい。
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Research Products
(3 results)