2013 Fiscal Year Annual Research Report
元素合成過程におけるニュートリノ‐原子核反応および電子捕獲反応
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22540290
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 俊夫 日本大学, 文理学部, 教授 (70139070)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 電子捕獲反応 / ニュートリノ核反応 / ベータ崩壊 / 核URCA過程 / 殻模型 / ガモフ・テラー遷移 / 元素合成 / r-プロセス |
Research Abstract |
新しい殻模型ハミルトニアンを用いて、元素合成過程や星の進化に重要な原子核での弱過程-ニュートリノ核反応、電子捕獲反応およびベータ崩壊-のより正確な評価を行い、sd殻核での精密評価のデータを8~10太陽質量の星の進化に応用した。 (1)新しいハミルトニアンを用いたニュートリノ‐13C 反応の断面積評価の研究を、γ線や中性子放出を伴う種々の個別の分岐チャネルへの断面積の評価に拡張して行い、原子炉・超新星ニュートリノのγ線検出による正確な測定の可能性を示した。 (2)質量数A=23 (Na<->Ne)、A=25 (Mg <->Na)、A=27 (Al<->Mg) 系を含む sd-殻核(A<28)に於いて、高温・高密度の天体条件下での電子捕獲率、陽電子捕獲率、ベータ崩壊率、ニュートリノによるエネルギー損失率等を系統的に調べた。これらの計算データをもとに、8~10太陽質量の星の進化、特にO-Ne-Mg 芯の核URCA過程によるニュートリノ放出を伴う冷却過程を研究した。A=25、23核での核URCA過程が星の冷却に重要な寄与をしていること、星の終末過程が星の質量およびURCA過程に敏感に影響されることを示した。同時に、精密な電子捕獲率、ベータ崩壊率を求めることの重要性を示した。 (3)fp殻核の新しいハミルトニアンを用いてfp殻核の GT 遷移と高密度、高温の天体条件下での電子捕獲反応の系統的な研究を、陽子過剰核領域まで拡張して行った。我々の精密な電子捕獲率を用いて、超新星爆発時の中性子過剰核の過剰合成問題の解決の可能性を示した。 (4)中性子数126の不安定核のベータ崩壊の半減期の殻模型による評価をZ > 73の領域まで拡張して行い、第一禁止遷移の重要性を示すとともに、標準的モデルより著しく短い半減期を得た。これは、r-過程元素合成の第三の山とその先のウラン領域への影響についての研究の基礎となる。また、QRPA(準粒子-乱雑位相近似)模型と殻模型による半減期の評価の比較を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
星の中での電子捕獲率とβ崩壊率の精密な評価を行うことによって、ニュートリノ放出を伴う核URCA過程による星の芯の冷却過程の重要性を明らかにし、8~10太陽質量の星の進化と終末を正確に記述できるようになった。核物理学の研究の成果を星の進化の研究に具体的に反映させることができた。 ニュートリノ‐13C反応、fp‐殻核の電子捕獲率の精密な評価、および N=126領域の不安定核のベータ崩壊率の精度の良い評価の研究を発展させることによって、新しいハミルトニアンによるスピンモードの系統的な記述の有効性と核力におけるテンソル力の重要性をさらに示すことができた。また、これらの成果は今後の元素合成の研究の発展、すなわち(1)Ni-Fe領域の中性子過剰核の過剰生成問題の解決、(2)Ia型超新星爆発における放出光の光度曲線の解析、(3)r-プロセス元素合成サイト‐芯崩壊型超新星爆発か中性子星合体か‐の解明にも重要である。 得られた研究成果を、数回の国際会議、国際シンポシウム、ワークショップで発表し、論文にまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ニュートリノ-原子核反応の各分岐チャネルへの断面積の評価の研究を、ニュートリノの検出に有効な16Oや、19Fの元素合成に重要な役割を果たす20Ne等の他の原子核にも拡張して発展させる。また、40Ar等の中重核でのニュートリノ-原子核反応の研究も継続して行う。 電子捕獲率の評価を星のI型の超新星爆発モデルに適用して、rp-過程での元素合成率の計算や光放出現象の記述(光度曲線の解析)に応用する。また、ベータ崩壊率の精度の良い評価とII型超新星爆発におけるニュートリノ-原子核反応断面積の新しい評価をもとに、r-プロセス元素合成のメカニズムとサイトの解明の研究を発展させる。星の進化、元素合成計算の専門家と協力して、核物理の精密計算の成果をこれらの天体現象に反映させる予定である。 三体力を含む核力の研究を継続して行い、非縮退軌道を扱う新しいG行列の手法による殻模型計算に適用して、中性子過剰核の殻進化の研究を発展させる。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Advanced burning stages and fate of 8-10 solar-mass stars2013
Author(s)
S. Jones, R. Hirschi, K. Nomoto, T. Fischer, F. X. Timmes, F. Herwig, B. Paxton, H. Toki, T. Suzuki, G. Martinez-Pinedo, Y. H. Lam and M. G. Bertolli
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 772
Pages: 150/1-14
DOI
Peer Reviewed
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