2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540292
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中里 弘道 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00180266)
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Keywords | 量子力学基礎 / マスター方程式 / 散逸過程 / entanglement |
Research Abstract |
本研究課題の目的は,外界(環境系)との相互作用下にある注目量子系の物理を,これまで不問に付されてきた感のある環境系のダイナミクスや量子系のコヒーレンスやエンタングルメントといった量子論的特徴の振る舞いを通して解析し,いわゆる開いた量子系の理解を深化させることにある.具体的には以下のような課題に取り組んだ. ・環境系の特徴付けとマスター方程式の再吟味に向けて:非自明で最も簡単な模型と思わる位相相互作用型スピン(量子系)-ボソン(環境)系のダイナミクスを厳密に解くことによって,従来は見過ごされてきた感のある,環境系に対する力学の再吟味に善手している.マルコフ・非マルコフ性の特徴付けや環境系の緩和時間に関して興味深い結果が得られるものと期待している.また,回転波近似のもとでの準位間遷移型相互作用をする場合のダイナミクスを,全ハミルトニアンの固有値と固有状態を求めるという観点から試みた.基底状態(真空)と第一励起状態のスペクトラムは既知ではあるが,今回,それらの周有状態の完全性(の一部)を示すことに目途が立った.同様にしてより高い励起状態のスベクトルの解析が進行中である, ・量子系の純粋度を測る新たな手法:量子コヒーレンスの有無の指標の一つとして用いられる純粋度は,系の状態を表す密度行列の2次の汎関数であって,1体の演算子の期待値として書くことができないため,何らかの物理量を測定してこの値を直接求めることは困難と考えられている.密度行列を予め再構築することなく純枠度を求める方法として従来提案されていた手法では,2重に用意された対象量子系に補助量子系を制御型ゲートを介して相互作用させることで純粋度が求まるとされていた.今回,(その実現が必ずしも容易ではない)制御型ゲートを用いずに純粋度を求める新たな方法を提案した、
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境系のダイナミクスの解明に大きな意味を持つ全体系のダイナミクスの解明,あるいはスペクトルの解析にある程度目途が立ってきている.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,調和振動子の集合系としてモデル化された環境系のダイナミクスの解析を通して環境系としての特徴付けを進めるるとともに,量子系を特徴づける物理量に関連した様々な課題の解析に当たる.基本的には当初の計画通りに進める予定である.
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Research Products
(2 results)