Research Abstract |
1998年に,これまでの宇宙描像を大きく変更するブレインモデルが提案されて以降,5次元以上の時空構造の研究は,トーラスのトポロジーを持つブラックホール解が発見されたり,LHC加速器実験による観測の可能性が示唆されるなど,たいへん注目を集めている.本研究では,高次元時空の本格的なダイナミクスを,数値計算を用いて研究し,時空特異点の形成条件やブラックホールの安定性問題に取り組んでいる.また,計算手法の開発も課題としている. 2011年度(H24年度)には,5次元時空での一般相対論的ダイナミクスを追うことのできるコードを開発し,トーラス状に物質を初期配置して重力崩壊現象を試みた.実際にリング状の地平面が出現するかどうかが焦点であったが,物質が回転をもたない場合,トーラス形状の地平面(ブラックリング)が形成され,その後,球状の地平面に変化することが確認された.また,物質が回転エネルギーを持つ場合(双方向回転の場合)を含めて扱えるように計算コードを改良したところ,リング形状の地平面のまま,ほぼ定常に保たれる場合が発見された.これらの結果は,予想の範囲内ではあるが,回転則こそ異なるが,ブラックリング解が形成できたことになり,これまでに得られていない結果でもある. また,安定な数値計算手法に関して,新たな定式化を行い,その有効性を確認した.2004年にFiskeによって提案された,運動方程式に拘束条件の2乗の汎関数微分項を加えるアイデアを,2011年度には現在世界的に標準となっているBSSN形式の方程式に適用した.我々は,Lagrange乗数の自由度を用いて拘束面をアトラクターとする定式化について一連の研究を展開しているが,その1つとして,利点や難点を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,シミュレーションコードの開発とパラメータ調整に時間を要したが,順調に成果が出せている.3年目には,予定通り次の新しい研究テーマに着手できそうだ.
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Strategy for Future Research Activity |
ブラックホール解の安定性解明に向けて,長時間積分を可能にするような座標条件の工夫,および定式化の工夫を進める.また,高次元時空での修正重力理論を用いたダイナミクス研究にも着手し,コード開発ならびにテスト計算を実現させる.いずれも当初予定の計画通りである.
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