2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540302
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
矢崎 紘一 独立行政法人理化学研究所, 橋本数理物理学研究室, 客員主管研究員 (60012382)
|
Keywords | 加速度系 / ブラックホール / 地平面 / 粒子交換力 / 伝播関数 / 束縛系 / 慣性力 / 安定性 |
Research Abstract |
一様加速度系における量子場の研究は、ブラックホールの地平面近くでの現象を調べる上で重要であるとともに、有限温度でのハドロン物理とも密接に関連している。今年度は特に加速度系において、粒子交換による相互作用がどのように変更されるか、また、その相互作用による束縛系がどのように振舞うかを調べた。粒子交換による相互作用はその粒子の伝播関数によって与えられる。通常問題になる静的相互作用は、時間に依存する伝播関数における振動数0のフーリエ成分で定まる。一様加速度系での時間に依存する伝播関数は、慣性系からの座標変換で求まるから、静的相互作用はそれを加速度系での時間変数について積分することにより得られる。具体的な計算は、質量のないスカラー粒子、ベクトル粒子(光子)およびテンソル粒子(重力子)に対して行った。どの場合も、慣性系では距離に反比例するポテンシャルで与えられ、加速度系でも近距離ではそれと一致するが、距離が増すにつれて粒子のスピンに依存する変更が生じ、虚数部分が現れることがわかった。虚数部分は、0エネルギー粒子の吸収、放出によるものであり、それは、慣性系では、加速されている源から放出される粒子に対応することも明らかになった。加速度系では、粒子交換力に加えて慣性力も働くが、そのために安定な束縛状態は存在しない。水素型原子の場合に加速度による寿命の変化を計算し、地平面付近での物質の安定性を議論した。この研究は、ドイツ、エルランゲン大学のレンツ名誉教授、東京大学の太田名誉教授を研究協力者として進めているが、今年度はレンツ教授を8週間、理研に招聘し、共同研究を行って、上のような成果を得た。これを論文としてまとめ、欧文誌に投稿して、掲載が決定している。
|
Research Products
(2 results)