Research Abstract |
米国フェルミ国立加速器研究所のテバトロン加速器を用いた陽子・反陽子衝突実験CDFでは,データ収集を行い,2011年9月末をもって実験を完了した。2001年の実験開始以来,約10fb^1のデータを収集・蓄積した。そのデータの解析を進め,重いクォークからなるクォークニウム粒子の生成機構について,その理解が深まった。特に,ボトムクォークとその反クォークの束縛状態であるウプシロン粒子の偏極度について,角分布の完全な測定を,初めて行なった。結果は,ほぼ無偏極であり,color octect modelの予言とは異なる。また,これまでの測定とよい一致を示す。この測定を記述した論文が,Physical Review Letters誌に投稿された。 また,欧州CERN研究所のLHC加速器を用いた陽子・陽子衝突実験ATLASでは,重心系エネルギー7TeVでの衝突実験が本格開始され,2011年末までにおよそ5fb-1のデータを収集した。検出器の理解を経て,データの物理解析が進行中である。ヂャーム・反チャームクォークの束縛状態であるJ/Ψ粒子の生成断面積が,ミュー粒子対への崩壊を利用して,横運動量の関数として測定された。その生成機構の解明にむけて,B粒子崩壊を起源とする成分とQCDによる生成の成分の割合が測定された。この結果は,Nuclear Physics B誌に発表された。また,ウプシロン粒子も再構成され,その生成断面積の測定が行われ,結果がPhysical Letters B誌に発表された。これらは,このエネルギー領域における初の測定である。さらに,ボトムクォークとその反クォークの束縛状態の励起状態であるXbについて,ウプシロン状態への輻射崩壊を通して,これまで見つかっていなかった新状態を発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
CDF実験については,ウプシロン粒子の偏極度について,その完全な角分布の測定を初めて行い,重要な情報を得た。また,ATLAS実験では,加速器の性能が向上したため当初の予定を上回るデータの蓄積に成功し,データの解析も順調に進行して,年度中に3件の原著論文が発表・受理されている。
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Strategy for Future Research Activity |
CDF実験では,加速器および検出器の運転が終了し,データ取得が完了したので,その全統計を用いた物理解析を行い,結果を公表する。ATLAS実験は,201年度において重心系エネルギー8TeVの陽子陽子衝突実験を行い,20fb^1程度のデータを蓄積する見込みである。その解析により,かつてない高エネルギーでのクォークオニウム生成についての結果が数多く得られ,研究課題について重要な知見が得られると期待される。
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