2011 Fiscal Year Annual Research Report
長時間気球観測データを用いた宇宙線反重陽子・反ヘリウムの精密探索
Project/Area Number |
22540322
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
吉村 浩司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (50272464)
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Keywords | 長時間気球観測 / 宇宙線 / 反重陽子 / 反ヘリウム / 太陽活動 / 初期宇宙 / 物質・反物質非対称 / 暗黒物質 |
Research Abstract |
本年度は、BESS-PolarIIのデータを用いて反重陽子、反ヘリウムの探索に必要な測定器性能を得るために、測定器較正を引き続き行い、以下のような成果を得た。 1、測定較正による性能の向上 前年度までに得られた中央飛跡検出器の高電圧の不安定に関する情報を利用して、測定器較正を行うことにより、運動量分解能、時間分解能を向上させることに成功した。得られた測定器性能は反ヘリウムの同定に必要十分なものである。現在、反重陽子同定のために重要な、dE/dXの精密較正を行っている。 2、反重陽子の探索 反重陽子の探索においては、同じ負電荷を持ち流束が多い反陽子が最も厳しいバックグランドとなる。本年度はエアロジェルチェレンコフカウンタおよび飛行時間カウンタのデータを用いて選別を行った。今後dE/dXの情報を用いて、さらに、精度の向上とエネルギー範囲の拡大を試みる。 3、反ヘリウムの探索 運動量分解能を向上させたデータを用いて、反ヘリウムの探索を行った。正電荷を持つヘリウムからのなだれ込みを排除することにより、探索する運動量範囲を狭めることなく、従来のデータに対して1桁上の感度での探索を行った。 得られた結果は、過去のBESS実験のデータと合わせる事により、BESS以前の結果にくらべ、1000倍の精度での探査結果となり、我々の周りに反物質優勢の世界がないことの最も直接的な証拠をあたえることとなった。この結果は論文誌Physical Review Letterに掲載され、APSおよびNature Physicsでもハイライトとして取り上げられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、反ヘリウムの原著論文として発表することができた。反重陽子に関しては、反陽子の測定結果をまとめるとともに、さらに測定器の性能を向上させ、探索をおこなっているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度中に反重陽子の探索結果を報告し、反ヘリウムの結果とともに、本研究の目的である、初期宇宙における素粒子現象に対して重要な知見が得られる。
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