2010 Fiscal Year Annual Research Report
スピン・電荷制御非平衡ナノ量子素子の有効理論の研究
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22540324
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
谷口 伸彦 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 准教授 (70227221)
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Keywords | 物性理論 / 半導体物性 / 量子ドット / ナノチューブ・フラーレン / ナノ材料 / 近藤効果 |
Research Abstract |
数値計算用のコンピュータを導入し、非平衡現象を記述可能な有効理論「有限相互作用スレーブボゾン法による電子相関の自己無撞着評価」の数値計算を実行することで、本年度の研究を実施した。その具体的実績は次の通り。 1.カーボンナノチューブドット系および静電相互作用二重量子ドット系をモデルとした、非線形コンダクタンスの挙動の解析を行った。軌道間/軌道内に働くクーロン相互作用の非対称性は、通常の(一粒子)近藤効果よりもむしろ,二粒子近藤効果に大きな影響を及ぼすことが明らかになった。さらに、得られた結果を既存の実験結果と比較検討を行うことで、従来、各実験で観測/非観測と相反する結果であった二粒子近藤効果が,実験で使われたバイアス電圧値に依るものとして系統的に解釈可能であることが明らかになった(論文発表済)。 2.1.のモデルにおいて、非平衡揺らぎ(ショットノイズ)の計算を行った。その結果は,実験結果とはよく合致するが、他の理論結果(フェルミ流体理論)とは異なる結果であり、現在、結果を解析中である。 3.リング素子に埋め込んだ単一準位量子ドット系において,スピン流が生成されるためには,クーロン相互作用、ラシュバ型スピン軌道相互作用、および有限バイアス電圧の三条件がすべて満たされる必要があることを、有効理論による自己無撞着計算により明らかにすることができた。この現象は、磁性体や磁場を全く使わないでスピン流が生成できる可能性を示し,大変重要と考える。また、三条件のうち、いずれが欠けてもスピン流が消失する真の意味の「非平衡多体現象」であることが明らかになった(学会・国際会議にて発表済)。
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