2011 Fiscal Year Annual Research Report
スピン・電荷制御非平衡ナノ量子素子の有効理論の研究
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22540324
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
谷口 伸彦 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (70227221)
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Keywords | 物性理論 / 半導体物性 / 量子ドット / スピントロニクス / ナノ材料 / 近藤効果 / ナノチューブ |
Research Abstract |
前年度に引き続き,非平衡現象を記述可能な有効理論「有限相互作用スレーブボゾン法による電子相関の自己無撞着評価」について,解析手法の改良し数値計算を行なうことで研究課題を遂行した。予算執行内容は,研究課題を遂行上で必要なノート型コンピューター式,専門書籍の購入,成果発表を行なった国際会議,日本物理学会への参加出張費等である。本年度の具体的実績は以下の通り。 1,前年度研究により,ラシュバ型スピン軌道相互作用をもつ単一準位量子ドット系は、「非平衡多体現象」としてスピン流が生成可能であることが明らかになった。本年度は継続してその生成機構を「非平衡近藤効果」の側面から詳細に調べ,成果発表を行なった(国際会議発表済,論文投稿済)。 2.上記の系に新たに制御パラメータとして横磁場を導入し,その制御性を調べた。この現象の解析にはスピン回転対称性を保持する新たなスレーブボゾン法を必要とする。この新手法を初めて非平衡系に適用し解析を行うことで,横磁場による制御性を明らかにした(日本物理学会発表済)。 3.前年度行なったスレーブボゾン近似法による非平衡揺らぎ(ショットノイズ)の解析には,相互作用が自己エネルギーとしてのみ考慮され,相互作用結節補正が考慮されていないため不十分であるという批判があった。そのため,相互作用結節点補正をスレーブボゾン法の枠組みで取り込む手法を検討した。様々な可能性を検討した結果,完全計数統計に用いられる計数場を導入し,計数場に依存した平均場解を使うことが,相互作用結節補正を考慮することと等価であることが明らかになった(日本物理学会発表済)。単一準位量子ドット系について,このスキームに従い非平衡揺らぎの解析を予備的に行なった所,数値的にも相互作用結節部の寄与が取り込めていることが確認できた(日本物理学会発表済)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初第一年~二年度に研究解析終了予定の非平衡ゆらぎ解析については、当初計画した解析をすべて終了したものの、不十分な点(相互作用結節補正の考慮)があることが判明した。そのため、この点に改善を施した取り扱いが望まれる。当初計画で第二年度実施予定のラシュバ型スピン軌道相互作用をもつ単一準位量子ドット系のスピン流現象については、予定よりもやや進んだペースで基本的な部分の解析を終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
非平衡ゆらぎを解析するため最大の懸案事項となった相互作用結節補正に関する取り扱いは、当初計画には含まれていなかったが、第二年度、計数場依存性を考慮して有効場理論を拡張することで取り込むを示すことができた。これを踏まえ、第三年度には、当初計画を実施するとともに、計数場依存の拡張をした有効理論により非平衡ゆらぎ解析を実施することが、優先順位の高い研究課題となった、と考える。
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Research Products
(3 results)