2011 Fiscal Year Annual Research Report
内殻励起X線分光に関する第一原理バンド計算からの理論的研究
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22540325
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
高橋 学 群馬大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50250816)
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Keywords | 遷移金属 / 内殻光電子分光 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
22年度に引き続き、我々の提案した理論計算方法を用いて強磁性遷移金属の2p内殻光電子分光スペクトルの解析を行った。単体の遷移金属で2p軌道の自由度を考慮しない範囲であるが、実験スペクトルのサテライト構造の元素依存性とthreshold peakの交換分裂の傾向を良く再現できることが分かり、磁気モーメントとバンドフィリングの観点から理解できることを明らかにした。Niでは顕著なサテライト構造が現れるのに対し、Feでは比較的鋭いシングルピークになること再現することに成功したが、Ni 2p、3sXPSに見られるサテライトピークの位置は計算では1~2eV程度浅い位置に出てしまう。これは、完全遮蔽ポテンシャルを終状態ポテンシャルとすることに問題があると思われる。しかしながら、先見的なパラメータを無しにスペクトル形状の元素依存性、励起コア依存性、光電子スピン依存性を再現できることは注目に値する。これらの結果は、遍歴電子系におけるXPSスペクトルの解析に我々の方法が有効であることを示している。将来、局所密度汎関数近似を超える近似を取り入れた第一原理計算が行えるようになれば、我々の提案する手法を用いて遍歴電子系における.光電子分光の理解が飛躍的に進むと期待される。一方、thresholdピークの交換分裂のエネルギーの差を見積もる方法として、コアホールをゼロ密度極限の不純物と見なしてコヒーレントポテンシャル近似で計算する方法を提案した。この方法ではスーパーセルを用いないので簡便にエネルギー差を高精度で見積もりことができる。以上の結果をまとめ、PRB85、085128として発表した。 水晶等の螺旋結晶構造をもつ物質における共鳴散乱スペクトルの自然円二色性について、電子状態とスペクトル形状を結びつけるための定式化を行った。その公式を用い、第一原理計算をする前段階して、簡単なモデルで計算を行い、スペクトル強度のアジマス角依存性まで含めて電気双極子遷移の範囲で説明がつきそうであることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホイスラー合金におけるスペクトル計算の試みについては、系が大きいことに起因して、数値的収束性が極めて遅いため、実験スペクトルの解析まで至れなかった。しかし、一方で、単純な遷移金属強磁性におけるスペクトルの問題で交換分裂の大きさを見積もる方法を提案し実験とよい一致を示すことができ、我々の提案する計算方法が、遍歴電子系におけるスペクトルの解析に有効であることを示すことができた。また、水晶をはじめとする螺旋結晶構造をもつ系における共鳴X線散乱の自然円二色性スペクトルの研究に関しては、第一原理計算からスペクトルを得る理論的枠組みを構築するところまでできている。それに付随して、モデル計算を進めることができた。これらから判断して概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
水晶をはじめとする螺旋結晶構造をもつ系における共鳴X線散乱の自然円二色性スペクトルの研究に関しては、モデル計算で物理的理解を得た上で第一原理計算を進める。合金系における内殻XPSスペクトルについては、自己無撞着ポテンシャルを慎重に求め信用できる結果を得たい。また、Fe-Co-Ni系の合金系を利用して、XSPのthresholdピークにおける交換分裂が局所磁気モーメントにどのように依存するのか明らかにする。さらに、時間依存密度汎関数法を利用しコアホールの遮蔽プロセス、遮蔽時間の元素依存性を明らかにできないか検討を行う。
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Research Products
(4 results)