2011 Fiscal Year Annual Research Report
超イオン伝導ガラスの高次構造と超イオン伝導チャネル形成のメカニズム
Project/Area Number |
22540331
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
川北 至信 独立行政法人日本原子力研究開発機構, J-PARCセンター, 任期付研究員 (50264015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 信一 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (10111733)
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Keywords | 超イオン伝導 / ガラス / ミクロ相分離 / 構造物質 / 放射線、X線、粒子線 |
Research Abstract |
Ag系の超イオン伝導ガラスのイオン拡散チャンネルの形成が、液相におけるAgイオンの協同拡散現象に起因することを明確にするため、Ag-(GeSe3)系とAgI-AgPO3系の種々の組成の超イオン伝導ガラスおよびその溶融相について、構造解析研究を進めている。すでに先行研究により、これらのガラス系ではAgイオンの中距離構造揺らぎの存在、さらにもう少し大きなドメインのミクロ相分離の存在が示唆されているので、SPring-8のBLO4B2ビームラインのイメージングプレートを用いたX線小角散乱測定を実施し、より大きな構造相関を調べた。これらの新規に得られた構造データと22年度に実施した高エネルギーX線回折および既知の中性子回折データを同時にフィットするような構造モデルを、逆モンテカルロ(ReverseMonteCarlo、剛C)法を用いたPCシミュレーションにより構築した。その結果、Ag-(GeSe3)系では、Ag低濃度の半導体ガラス領域と、Ag高濃度の超イオン伝導領域で、Ag中距離構造が明確に異なり、後者ではAgイオンが線状につらなる傾向を示すことが分かった。またAgI-AgPO3系では、溶融相にも中距離構造の存在を示唆するFSDPと呼ばれる特徴的ピークが構造因子の低波数領域に存在することや、これがPO4四面体のネットワークの成長と関連することをRMCモデルから見出した。 また液相での構造形成がAgイオン特有のものであるのかどうかを調べるため、22年度のAgl-Rbl溶融塩混合系、AgC1-Rbq溶融塩混合系に引き続き、NaI-AgI溶融塩混合系について、SPring-8のBLO4B2ビームラインを用いたX線回折実験を行った。これらの液体の構造因子にもFSDPが存在し、組成により相関の特徴的な長さを連続的に変化させることを見出した。今後、中距離構造が液相での高速イオン伝導と関係するのか、溶融塩混合系に共通する現象であるのかを慎重に検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
X線異常散乱実験を実施する予定にしていたが、平成23年度は連携研究者による実施可能性の調査にとどめたため、交付申請書記載にくらべ若干の遅れがある。ただし、平成24年度7月にビームタイムを確保しており、実施に目途はついているため、この若干の遅れを除けば順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究課題の最終年にあたり、これまで2年間で行った超イオン伝導ガラスおよびその溶融相の構造研究の仕上げとしてX線異常散乱測定を計画している。また、この研究をさらにイオン・ダイナミクスへ展開していくための端緒とするための中性子非弾性散乱測定を計画している。またすでに部分的に成果公表を行っており研究として順調に進んでいるので、成果をさらに学術雑誌へ投稿するとともに国際的な評価へとつなげたい。
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