2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子系のコヒーレンス制御による大振幅コヒーレントフォノンの生成
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22540334
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
欅田 英之 上智大学, 理工学部, 助教 (50296886)
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Keywords | 光物性 / コヒーレントフォノン |
Research Abstract |
本研究では、制御された極短光パルスを使い、マクロなサイズを持つ固体中において、格子の非調和効果のみによるコヒーレントフォノンのソフト化の実現をめざす。 今年度は、まず、非共鳴条件下で高強度の光パルスを用いて、コヒーレントフォノンがどこまで大振幅化できるかを確認した。その結果、非共鳴といえども、パルス光強度を上げるに従って多光子励起が生じ、それによる試料の損傷で最大振幅が制限されてしまうことが分かった。そこで、これを回避するために、強度の総和が高強度パルスと等しく、かつ間隔が格子振動周期と同じパルス列を用意した。これを用いて測定を行った結果、多光子吸収を抑制しつつ、上記の制限よりも大きな振幅を持つコヒーレントフォノンを作成できることを実験的に明らかにした。このことは、パルス整形技術によって、試料の電子系を低温に保ちつつフォノンのソフト化が実現できる可能性を示唆している。 さらに、本年度は、量子ドットにおけるコヒーレントフォノンの観測を再度試みた。昨年度に行った量子ドット分散ガラスを用いた実験では、コヒーレントフォノンの観測に至らなかった。この要因として、S/Nが十分でないことと、試料の質が悪くて信号が弱いことが考えられる。そのため、まず、光源の改良によって光パルス間の強度揺らぎを抑え、測定感度を向上させた。さらに、より粒径の揃った試料を用意することで、CdSeドットのE2モードのコヒーレントフォノンの観測に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では固体中におけるコヒーレントフォノンのソフト化を目指しており、そのために交付申請書において、1.バルク半導体における大振幅化 2.量子ドットにおける電子-格子系のコヒーレンスの観測を目的とした。今年度の研究において、このいずれも完遂は出来てはいないが、いずれも目処がつく結果が得られており、おおむね目的に沿って研究を達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、今年度に得られた結果を踏まえて、非調和コヒーレントフォノンの実現を目指す。このために、バルク半導体では、パルス整形技術を使って、多光子励起を抑制しながら、従来は実現不可能だった大振幅なコヒーレントフォノンを作成する。 また、量子ドットでは、閉じ込め電子系に特有の、電子系の長いコヒーレンス時間がを利用し、電子系のコヒーレンスの制御がコヒーレントフォノン増大につながる可能性を探る。
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