2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540335
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
石井 靖 中央大学, 理工学部, 教授 (60143541)
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Keywords | 表面界面 / 準結晶 |
Research Abstract |
Ag-In-Yb準結晶に対する実験的研究が物質材料研究機構の実験グループにより進められている。そこで得られた実験結果に対して理論面から電子論的解釈を与え、新たな実験の指針を提供する為に、Ag-In-Yb系に対して以下の研究を行った。 1.1/1近似結晶の(001)面の電子状態と安定構造に対する知見を得るために、第一原理電子構造計算に基づく「simulated cleavage」の方法によりへき開構造を調べた。このシミュレーションでは結晶を一方向に伸ばした構造を初期構造として、各原子に作用する力が無視できるほど小さくなるところまで原子位置を緩和し、安定な表面構造を得る。その結果、1/1近似結晶の構造を特徴付けるクラスターの一部が表面に現れて、表面の凹凸を示すような構造が得られることが見出された。この表面構造について走査トンネル顕微鏡像を計算し、物質材料研究機構のグループによる実験結果に概ね一致する結果を得た。このことより1/1近似結晶の(001)面に関して、ミクロな原子配置に関する知見が得られたものと考えられる。 2.Ag-In-Yb準結晶へのPb/Sbの吸着実験により、吸着サイトのモデルが提案されている。準結品構造模型から切り出した5回対称クラスター模型にPb/Sbを吸着した系の電子状態を計算し、吸着エネルギーの比較から最適な吸着サイトを理論的に予想し、実験から提案されたモデルの妥当性を検討した。吸着の初期過程で問題となるような単原子吸着の場合は、実験的な予想によく一致する結果がすでに得られており、本年度はそれ以降の吸着過程について検討した。その結果、走査型トンネル顕微鏡観察では検出しにくいと思われる深い位置への吸着の可能性が示唆された。この結果を実験グループにフィードバックし、そうしたサイトへの吸着の可能性を他の方法で検出する可能性について検討を依頼した。また、顕微鏡観察で検出されている吸着サイトの安定性について検討を行ったが、実験との完全な一致は今のところ得られていない。クラスター模型の構造や吸着過程の他の可能性などについて検討を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1/1近似結晶の(001)面の表面構造に関する知見等、着実に新しい成果が得られていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
Ag-In-Yb準結晶へのPb/Sbの吸着の研究について、実験グループと情報交換をしながら進める。吸着の初期過程については実験との一致がある程度得られているが、さらに吸着量が多くなったあたりでは計算により吸着の様子をシミュレートすることに成功していない。仮定した清浄表面の構造模型に依存する可能性もあり、実験との完全な一致を目指すよりも、吸着過程のいくつかの可能性を示して実験結果の解釈に資することを目的に、計算を進める。
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Research Products
(4 results)