2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学法による固体および液体電解質中におけるイオン間相互作用とダイナミックス
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22540337
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
松永 茂樹 長岡工業高等専門学校, 一般教育科, 教授 (70321411)
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Keywords | 分子動力学 / シミュレーション / 溶融塩3元系 / 二体ポテンシャル / 分極モデル / 誘電遮蔽 / 貴金属ハライド / イオン電導度 |
Research Abstract |
イオン性液体や固体電解質中におけるイオン間相互作用や、イオンの伝導度等の輸送現象の基礎的な研究は、燃料電池や電力貯蔵用のバッテリー等の開発にとって有益であると考えられる。我々はこれまで溶融塩や固体電解質、超イオン導電体中のイオンの伝導機構の研究を継続してきた。本研究ではこれまでの研究の継続として、2種類の可動陽イオンAg+及びCu+を含む貴金属ハライド擬2元系の溶融相および超イオン導電相において分子動力学シミュレーションを行い、平均二乗変位や速度相関関数を求め、これらより輸送係数や振動数に依存した拡散係数を求めた。その結果Ag+とCu+に対してこれらの値が顕著に異なることを示した。また、多成分系における密度の揺らぎScicj(k)、さらに多成分系の動的構造因子Sij(k,w)等を求め、Ag+とCu+イオンの間の相互作用について、巨視的な熱力学的諸量との関係も含めて詳細に考察した。さらに、異種の陽イオンRb+とAg+を含む系である超イオン導電体であるRbAg4I5の融体について、イオンの分極を考慮し、かつ誘電遮蔽の効果によってポテンシャルの発散を避ける項を含む2体ポテンシャルを適応して分子動力学シミュレーションを行った。得られた構造、輸送係数、さらに動的構造因子はAg+およびCu+を含む貴金属ハライド混合系とは大きく異なっている。これはRbAg4I5の超イオン導電相における可動陽イオンがAg+のみでありRb+はI-とともに格子点で振動するという固体での性質が融体でもある程度残存しているためと考えられる。さらに、溶融塩中のイオン伝導度の理論を発展させた。また誘電関数ε(q)を溶融塩の構造因子から求めて遮蔽されたポテンシャルを得るための理論的背景とAgハライド、Cuハライド等における種々の計算例を、新たに融体CsAu系の結果を加えて著書にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超イオン導電体及びその融体について、主としてこれまであまり詳細に調べられていない2種類の陽イオンを含む系に関して、構造、輸送係数、動的性質、さらにイオン電導度、固体からの融解前駆現象、誘電遮蔽等について種々の観点から考察してきた。特に、分極を考慮したイオン間の2体ポテンシャルについて、発散を防ぐモデルを今回新たに提案し、融体RbAg4I5に適応して考察した。我々の知る限り、日本物理学会2011年秋季大会での我々の発表が、融体RbAg4I5の分子動力学シミュレーションによる研究の最初の報告である。また、本研究では平成22年以降これまでに雑誌論文4報(うち単著1報、筆頭著者2報)、著書1冊、学会発表13回(うち国際会議での発表3回)等の研究成果の発表を行ってきた。さらに、現在3報の単著論文を投稿中であるが、うち2報は掲載が決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進については、平成23年度までの分子動力学シミュレーションによる溶融塩3元系の研究を継続する。その際、基本計算については他大学の大型計算機を適宜使用し、構造、輸送現象、動的性質の計算を精度よく行い、これまでの研究を踏まえて溶液の構造と輸送現象、およびイオン結晶、超イオン導電体の電子状態の研究へ展開していく。これらについては、すでに一部発表済みである。特に、今年度新たに取り組んだ異種の陽イオンを含む系の研究を継続する予定である。
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Research Products
(10 results)