2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540339
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
左右田 龍太郎 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (00354407)
|
Keywords | 分子性固体 / ガラス転移 / 表面拡散 / 二次イオン質量分析 |
Research Abstract |
バルクのガラス転移に対応して表面でもガラス転移の起こることが期待される。表面最外層に生成される液体の性質を明らかにするため、飛行時間二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて分子拡散と薄膜の形態変化を温度と膜厚の関数として解析した。3-メチルペンタン、クメン、エチルベンゼンの薄膜を用いた実験から、バルクのガラス転移温度(Tg)付近で流動性の出現により薄膜の形態に変化が起こることが分かった。一方、エチルベンゼン薄膜をTg(118K)よりかなり低い温度(20K)で作成した場合には、自己拡散が70K付近で起こった。この現象を解明するため、ポーラスシリコン基板を用いてエチルベンゼン分子の自己拡散の開始温度を調べたところやはり70Kとなり、この現象はエチルベンゼン薄膜自身がポーラスな構造を有しており、その表面で分子拡散が促進されるためであると解釈された。このように、表面最外層には二次元液体が存在することが明らかとなった。水、エタノール、3-メチルペンタンでも二次元液体の転移温度はバルクのTgに比べて20K程度低いことが分かった。一方、基板との相互作用が二次元液体に及ぼす影響を評価したところ、水では基板との水素結合の有無にかかわらず分子が協調的に運動して流動性が生じていることが確認されたが、エタノールでは基板との相互作用が分子間の相互作用に勝り分子が個別的に拡散するという顕著な相違が確認された。クラスターによる協調的な分子拡散はTg付近のバルク液体で重要な役割を演じていると考えられているが、本研究により二次元液体でも同様なメカニズムで表面のガラス転移が起こり流動性が生じていることが明らかとなった。
|
Research Products
(5 results)