2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540339
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
左右田 龍太郎 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, MANA研究者 (00354407)
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Keywords | 表面・界面 / 分子性固体 / 薄膜 / ガラス転移 |
Research Abstract |
界面における分子の吸着状態および親和性が、固体表面に束縛された液体薄膜の構造および属性にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにすることを目的として研究を行っている。薄膜のガラス転移温度(Tg)が膜厚を薄くするとバルクの値と比較して著しく変化する現象(ナノ束縛効果)が知られているが、今年度は(1)種々の分子性薄膜(n-ペンタン、トルエン、エチルベンゼン、3-メチルペンタン)のガラス転移におけるナノ束縛効果を原子・分子レベルで明らかするとともに、(2)陽極酸化法により作成したポーラスシリコンの基板を用い、表面に吸着した単分子層(水、メタノール、エタノール、アセトン、二酸化炭素)の表面拡散が起こり始める温度(表面ガラス転移温度)を決定した。その結果、いずれの分子においても表面ガラス転移温度はバルクのTgよりかなり低いことがわかった。このような2次元表面液体の存在が、薄膜のナノ束縛効果にどのように関与しているのかを膜厚と基板依存性に関する実験結果を基に議論した。その結果、2次元表面液体の流動性にはバルクに生ずる過冷却液体のそれと同様な協力現象によって起こっていることがわかった。バルクではあるドメイン単位で流動性が起こりそれがガラス転移現象の発生と密接に関係していると考えられているが、表面や薄膜でもそのように協力的に運動する領域が存在するものと考えられる。しかしその同定には、基板による効果(デッドレイヤーの形成)を極力小さくして薄膜のサイズ効果を調べる必要がある。このため、表面エネルギーの小さいフルオロカーボンで終端した金属およびシリコン基板を用いて薄膜に流動性が生じる温度を膜厚の関数として測定し、約5分子程度が協力的に動くことで薄膜に流動性が生じていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液体のナノ束縛効果に関連した最も明確で重要な現象として、ガラス転移温度の膜厚および基板依存性を明らかにすることが極めて重要である。本年度はこようなナノ束縛効果の本質にかかわる重要な現象をミクロスコピックなレベルから明らかにすることができたことから、研究は順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もナノ束縛液体のガラス転移温度に及ぼす膜厚と基板依存性について他の分子薄膜を用いた研究を行う。ナノ束縛効果に関してはこれまでポリマーを用いた研究が主流で世界中で多くの研究が行われてきた。そこではナノ束縛液体の存在とその発生メカニズムに関して議論がかなり混沌としている。ちなみに単純な分子薄膜のガラス転移の研究はこれまで世界で我々のグループのみが行ってきた。今後はポリマーについても同様の研究を行い、これまで蓄積した実験結果と比較することにより、ポリマーでは具体的に何が実験的に観測されてその結果なぜ混沌が生じているのかを明らかにしていく必要がある。
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Research Products
(4 results)