2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22540340
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
井上 純一 独立行政法人物質・材料研究機構, 計算科学センター, 主任研究員 (90323427)
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Keywords | Berry phas / 光学的断熱操作 / トポロジカル絶縁体 |
Research Abstract |
物質を材料として利用することを念頭に,外場,特にレーザー光を能動的に用いることで,物質を所望の特性を有する状態に操舵する方法である光学的断熱操作法を考案した.その適用例として,近年特異な輸送現象を発現する物質として注目を集めているトポロジカル絶縁体に応用することで,照射光強度の断熱的な変化によって,通常絶縁体とトポロジカル絶縁体との間の量子相転移が可能になり,それに伴って量子化された電気伝導が制御できることを理論的に示した. 具体的には,まず時間的に変動する強度をもつ光が連続的に照射されている電子系を記述する有効ハミルトニアンの導出を行った.1次元系で知られていた,連続光照射をすることで発現する「動的局在(=dynamic localization)」という現象を参照し,フロケットの定理を用いて,2次元以上でも適用できかつ適用範囲が明確になる方法で再定式化することを出発点とした. 次に,格子上を運動する電子が,連続的な時間変動光と相互作用している系を考え,その有効ハミルトニアンを導出した.この結果に対して,トポロジカル絶縁体の秩序変数であるチャーン数という位相不変量を解析的に求めることで,この量が照射光強度の関数として断熱的に変化する様子を示す相図を得た.対応する物理現象としては,照射光強度の関数として量子化されたホール電流が得られることに現れる.この現象は,従来磁場で駆動されてきた量子ホール効果の光学的現象への拡張であることを主張した.これにより,トポロジカル絶縁体の物性制御に対する議論の端緒を拓いたと考えている.
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Research Products
(3 results)