2011 Fiscal Year Annual Research Report
常圧氷は本当に72Kで秩序化するか?―現代的理論アプローチ
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22540342
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
岩野 薫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究機関講師 (10211765)
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Keywords | 氷 / プロトン秩序化 / 物性理論 / モンテ・カルロ計算 |
Research Abstract |
氷の常圧下における相転移の存在を理論的に検証するために現代的なモンテカルロシミュレーションの手法を用いて理論的研究を行っている。特にプロトンの空間的位置が秩序化したいわゆるXI相はそれへの転移の極めて長い緩和時間のために純粋氷ではまだ実験的に確認されていない。本研究では簡単化されてはいるが氷の振動スペクトルを定性的に再現する格子モデルを用いてXI相の存在を理論的に検証しつつある。 現在までのところ、モンテカルロシミュレーションのプログラム開発の基礎的部分をほぼ完了し、昨年度はその試験的なシミュレーションテストに取り組んだ。その結果として得られた知見を以下にまとめる。 1.いわゆる反電場の項は人為的に秩序ドメインを有するプロトン配位を生成させ考察した所、やはりその安定性に密接に関係しているようである。特にドメインの形状に依存するような感触が得られている。すなわち、細長いドメインでは反電場は減少し、したがってエネルギーも相対的に安定する。一方、球形のドメインの場合は有限ないわゆる反電場係数故に反電場は増大し、相対的に不安定化する。この事は相転移におけるドメイン成長の可能な振る舞いを本質的に規定することが予想され興味深い。 2.シミュレーションのエルゴード性についてであるが、計算時間が今のところまだまだかかっており、必ずしも十分に検証が出来ていない。この点はさらにデータを蓄積することにより明確に出来ると期待される。 なお、計算時間の最もかかっている部分はやはり長距離クーロン項である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に反電場項の存在とドメイン形状の関係性について肯定的な結果を得ることが出来た。 また、試験的にシミュレーションも実質的に行うことが出来、計画通りと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
エルゴード性のチェックを早々に行い、さらに高度な手法(たとえばloopアルゴリズム)の導入の必要性を判断する。 もし必要な場合はそれを導入しシミュレーションを実施する。必要ない場合はこのまま十分なデータ量が得られるまでシミュレーションを続ける。またそれと同時に計算の効率化、特に長距離クーロン項の扱いを多極子展開の手法に置き換えることも検討する。そのようにしてなるべく今年度中に相転移の存在について理論的結論が得られるように努力する。
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Research Products
(3 results)