2011 Fiscal Year Annual Research Report
複合素励起の干渉による電子相のX線非弾性散乱による解明
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22540345
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
筒井 智嗣 財団法人 高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主幹研究員 (70360823)
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Keywords | X線非弾性散乱 / 強相関電子系 / フォノン / 電子・格子相互作用 / 結晶場励起 / 充填スクッテルダイト |
Research Abstract |
前年度より引き続き、高分解能X線非弾性散乱を主要な実験手段として、低エネルギー領域における電子励起の観測の可能性について実験的な検証を行なってきた。前年度に行なった実験では当初の研究計画で文献等から観測の可能性が高いと思われていたいくつかの化合物で電子励起と干渉現象を起こすようなフォノン・モードの観測ができなかったため、計画にはなかったが候補としていた化合物に対象を変更するとともに、これまでの研究についても見直しを行なうことにした。 高分解能X線非弾性散乱および核共鳴非弾性散乱、EXAFSを用いて一連の充填スクッテルダイトのゲスト・モードのエネルギーやゲスト・モード由来のアインシュタイン温度を調べたところ、Sb系のゲスト・モードのエネルギーは多くの強相関電子系において基底状態の電子状態と密接な関わりをもつ素励起のエネルギーに相当する領域で観測されていることが明らかとなった。また、マクロ測定から結晶場励起とフォノン励起の干渉効果が期待されていたProOs_4Sb_<12>およびPrRu_4Sb_<12>の混晶系についてX線非弾性散乱スペクトルの置換濃度依存性について調べた。その結果、マクロ測定から結晶場励起とフォノン励起の干渉の可能性が期待されていたRuの置換濃度が約70%の試料において、これまで中性子非弾性散乱等で議論されてきた非調和振動では解釈が困難な振舞が観測された。さらに、一連のROs_4Sb_<12>において、f電子の有無とゲスト・モードにおける電子・格子相互作用の間に強い相関関係があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究立案当初計画をしていなかったが、予てより候補の一つであった混晶系のスクッテルダイト化合物においてこマクロ測定から予測されるような結晶場励起とフォノン励起の干渉を示唆する置換濃度依存性が観測されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた充填スクッテルダイト化合物における置換濃度依存性に関するスペクトル解析を進め、得られた結果が干渉効果であるかどうかについて検討を行なう。また、置換効果による結晶内の乱れに関する知見の有無を検証するためにエンド・メンバーの化合物におけるフォノンの分散関係及びスペクトル強度に関して、実験的な検証を行なう。さらに、結晶場励起とフォノン励起の干渉に関して当該分野で先導的な役割を果たしている国内外の理論家との議論を始め、干渉現象と電子状態の相関について考察する。
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