2010 Fiscal Year Annual Research Report
新たな自己無撞着摂動展開法によるボーズ・アインシュタイン凝縮相の理論的研究
Project/Area Number |
22540356
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北 孝文 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (20186224)
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Keywords | ボーズ・アインシュタイン凝縮 / 場の量子論 / 自発的対称性の破れ / グリーン関数 / 密度揺らぎ / 南部-ゴールドストーン・ボゾン / ボゴリュボフ励起 / 超流動 |
Research Abstract |
一粒子グリーン関数を用いたボーズ・アインシュタイン凝縮相の自己無撞着摂動展開理論を、二粒子グリーン関数を計算できるように拡張し、二粒子グリーン関数が従う厳密なベーテ-サルピータ方程式を導出した。この定式化は、トラップ・ポテンシャル中のボーズ粒子系や量子渦のあるボーズ粒子系など、一般の非一様系に適用できる。この定式化を用いて、二粒子グリーン関数の極の一般的性質を、一粒子グリーン関数の極と比較しながら明らかにした[T.Kita, Phys, Rev.B81, 214513(2010)]。 従来広く受け入れられてきたガボレとノジエールの理論[J.Gavoret and P.Nozieres : Ann.Phys.28(1964)349]では、ボーズ・アインシュタイン凝縮相において、一粒子グリーン関数と二粒子グリーン関数が同じ極を持つとされている。これは、一粒子グリーン関数の極(=ボゴリュボフ励起)が、非弾性中性子散乱などで観測される密度揺らぎに等しいことを意味し、変分波動関数を用いた超流動^4Heのファインマン理論を微視的に基礎付ける結果であると考えられてきた。 しかし、新たな理論によると、一粒子グリーン関数と二粒子グリーン関数の極は一致せず、一般に異なる。これは、ボゴリュボフ励起が音波ではないことを意味し、従来の見解を覆す基本的かつ重要な成果である。 また、ケルディシュ・グリーン関数を用いた非平衡統計力学のレビュー論文を書き上げた[T.Kita, Prog.Theor.Phys.123,581(2010)]。この成果は、凝縮ボーズ粒子系の非平衡ダイナミックスを扱う際にも、大いに役立つと考えている。
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